第845号 猛暑に対応する社会を

2018年7月28日 (土) ─

 23日、埼玉県熊谷市で観測史上最高の41.1度を記録するなど、全国的に記録的な暑さが続いています。

◆猛暑は「自然災害」
 この猛暑による被害は拡大を続けています。消防庁によると、16日から22日までの1週間に熱中症の症状で救急搬送された患者は全国で2万2647人に上り、そのうち65人が亡くなられています。また、レタスやキャベツといった野菜類の栽培にも悪影響が生じ、価格が上昇傾向にあります。猛暑はもはや単なる気象の変化ではなく、地震や台風と同じ「自然災害」と認識する必要があります。

◆子どもの熱中症を防げ
 猛暑による最大の脅威は熱中症です。特に熱中症になりやすい高齢者と子どもを守る対策が必要です。

 高齢者向けには空調利用の啓発活動や、医療機関による熱中症相談の整備など、子どもについては学校設備の充実が考えられます。冷房に関し、学校のエアコン設置は、基本的に各自治体の予算で行われており、財政状態で設置状況に差が見られるのが現状です。

 例えば、小中学校普通教室のエアコン設置率は大阪府では77.3%なのに対し、奈良県は7.4%にとどまっています。冷房の未整備は、子どもの熱中症の危険性を高めていることはもちろん、子ども達の学習そのものに悪影響が及びます。もはや冷房の整備は、教科書や図書室などと並んで教育の必須インフラになってきていると感じます。冷房の整備状況により、教育の地域間格差が生じないように、国が前面に出て補助を行うことが必要ではないかと思います。

◆猛暑と共存する社会の構築を
 そして、猛暑が恒常化しつつある今、単にエアコンの充実などのインフラ整備だけではなく、猛暑と共存する社会のあり方を考えなくてはならないと思います。

 例えば住居です。日本の住居は伝統的に高温多湿に対応した風通しの良いものでしたが、都市化や建築素材の変化により、熱が籠りやすい住居が増えています。今後は、住居のあり方もより高温の気候に対応して見直していくべきです。

 経済産業省は、新しい断熱素材や屋根の太陽光発電パネルを取り入れた、夏は涼しいクリーンな住宅の建築を推進する事業を行っていますが、こうした事業をさらに強化していくべきです。

 また、ライフスタイルの対応として、一時期検討されていたサマータイム制度の導入も考えられます。これは、夏の一時期に限定して、時計を一定時間進めることで、日照時間を有効活用しようという制度で、欧米諸国で導入例が見られます。猛暑との関係で言えば、時計を進めることにより、日の出から間もない涼しい時間帯から通勤や仕事に取り掛かることが可能になり、特に空調設備の無い現場労働者の労働環境改善が期待できます。学校の授業も、体育を早朝の時間帯に優先的に組み入れるなどして、熱中症の危険性を下げる必要があると思います。

 猛暑は全ての人の生活に関わる問題です。政治・行政も生活問題として、出来得る限りの対応策を早急に現実化しなければなりません。(了)

 

森ちゃん日記「多様性を認める社会」
 先日、子どもの不登校と若者の引きこもり・ニートに関する対策と現状について、県内でも先進的な生駒市で働く方の話を聞きました。教育にも熱心とされてきた生駒市は、教育機関だけでは成長段階によって起きる様々な対策に切れ目ができてしまう、そんな課題に直面し、昨年から近隣の学校、自治会など39の関係機関が横の連携を強化した子ども・若者ネットワークを構築しました。

 昨年度の相談件数は402件で、今年は6月までだけでも311件にも達することから、まずは相談のできる窓口が求められているのだと感じます。しかし、こうした取り組みには、自治体間で大きな差があるのも事実で、子ども若者育成支援推進法では、各自治体の努力義務で行われるものとされ、自治体は財政面でかなりの費用負担が必要となることが課題となっています。住む地域によって受けられる生活課題への取り組みに差がないよう県としてのバックアップ体制は重要です。

 誰もが活躍のできる居場所を創ること、そして、依然、非正規雇用が4割を占め、若者の安定的な雇用が求められる時代でこそ、社会が違う意見や違う立場を排除していくのではなく、多様性を認め合うことのできる環境を行政と政治家自らが切り拓いていく必要があると強く感じています。

第845号 猛暑に対応する社会を