第813号 NHK受信料 不断の見直しを

2017年12月9日 (土) ─

 6日、最高裁判所は、テレビの設置者にNHKとの受信契約を義務付ける放送法の規定は「合憲」との判断を示しました。

◆「公共放送」の意義
 最高裁判所は今回の合憲判断の理由として、受信料は、NHKに国家機関などからの影響が及ばないように国民に広く負担を求める仕組みであり、国民の知る権利を充たすための合理的な制度だから、というものでした。

 電波が有限で公共的性格を持つ以上、特定の営利に走らない公共放送が必要であることは否定できません。その運営・維持のためには国民の負担が必要という考えは理解でき、妥当と考えます。

◆政治の不作為こそが問題
 一方で、受信料制度の運用は多くの課題を抱えており、今後見直しを行っていくことも必要です。まず、公平性の点で疑問があります。

 現在、全体の2割以上、900万以上もの世帯が受信料を支払っていないと推計されています。

 受信契約を義務付ける規定の趣旨が、国民の負担で公共放送を維持し、国民自身の知る権利を守るところにあるのならば、公平な国民の負担が要求されるはずです。

 それにもかかわらず、受信料を支払う世帯と支払わない世帯が混在し、それが野放しにされている状況は、負担の公平性を損ねるものです。

 受信料を支払っていない世帯全てに対し、NHK側が訴訟を提起して回収を行うのは事実上不可能なことです。

 公平な負担の確保が担保されていない現状は明らかに制度上の不備であり、受信料不払い問題の本質は立法を行う政治の不作為にあると考えます。

 諸外国を見ると、ドイツでは、全世帯に一律に負担を課す公共放送負担金制度を導入しています。また、フランスのように税として徴収されているケースもあります。

 不払いに対する罰金制度を定める国も多く、こうした例を参考にしつつ、我が国でも「公共放送の負担のあり方」についての議論を進めるべきです。

◆公共放送の使命踏まえた見直しを
 また、基本的にテレビを介した公共放送の受信を前提としていた時代は変化し、インターネットを介した情報の受信が発達し、公共放送の受信の仕方や、公共放送に求められる役割も変化してきています。

 最高裁の判断は、単に今の制度は憲法に違反するものではないとしているに過ぎません。

 政府及び国会は、合憲判決に甘んずることなく、むしろ今回の判決を機に、新しい時代における公共放送のあり方とその負担について議論を進めて行くべきです。それこそが政治の義務だと考えます。

 そしてNHK側も、国民の納得を得て受信料制度を維持するためには、受信料を単なる「既得権」とするのではなく、受信料の金額が適正か、その使途は妥当か、公共放送として内容は適切か、などについてさらなる透明性を持った説明と不断の見直しが求められます。 現状の受信料制度が持つ課題に向き合い、真に、国民の知る権利に資する放送が提供される制度構築を目指すべきです。(了)

 

森ちゃん日記「次世代へ」
 日常生活の中で人と人との『繋がり』の希薄化が問題視されてから、個人と社会との接点について、多くの議論がされてきました。

 時代の移り変わりと共に社会構造も大きく変わり、少子高齢化の渦の中では、コミュニケーションツールとしてのネット社会の拡大により、画面上で『繋がる』接点が多くなってきたのもその要因の一つであると感じています。

 先週のまぶちNEWSの通り、再来年の5月1日からは新元号となり、一つの時代の区切りが訪れます。平成元年生まれの私としては、昭和が良き古いものと感じていたのも、次は我々がその立場になることを思うと、人と繋がることに危機感を持ってしまいます。

 幸いにも、私は北海道の過疎地域で育ったせいか、ネットで遠くの誰かと繋がるよりも、隣近所の方と関わらなければいけないような環境下で、知らない内に誰かに助けられながら、お互いが生活していたように思います。 隣人との付き合いは家族同然で、他に自治会よりも小さなコミュニティの「地区」と呼ばれる集まりが存在し、地区内では顔の見える付き合いが当たり前でした。また、地区ごとに子供会があり、毎日の集団登校時や夏休みのラジオ体操、催事にはほぼ強制参加させられていたという記憶があります。地域の高学年のお兄さんお姉さんが子供会の地区長と呼ばれ、低学年ながらの憧れでもありました。

  現在、奈良市では、地域の課題やまちづくりへの意見を地域全体で共有し決定していく新しい仕組みの組織として「地域自治協議会」の設立が各地域で始まっています。平成32年には、市内の全人口のうち31%が65歳以上を占める見通しで、行政の力だけでは対応が困難な大小さまざまな課題に対して、加入率の低下が課題となっている自治会の枠を超えて、意思決定をしていこう、というものです。子ども会、PTA、婦人会、商店街、マンション管理組合、ボランティア団体などさまざまな立場の人が、垣根を超えて地域の決め事に参画し、あらゆる繋がりを一つにまとめていきます。

 奈良は日本のはじまりの地。北海道とは異なり、古くからのしきたりや、ルールがある中で、新しい時代と共に、誰もが地域を良くしよう考え、参加できる取り組みに、少子高齢化社会における新たな地域のモデルとして期待したいです。

 平成生まれの一若者として、社会のために、何ができるか立ち止まって考え、行動に移したいと考えています。

第813号 NHK受信料 不断の見直しを