第715号 真の再分配の検討を
消費税率を10%に引き上げる際に、国民の負担を軽減するため与党が導入を目指している軽減税率をめぐって、与党内の議論が迷走を続けています。
◆軽減税率の問題点
軽減税率とは、食料品などの生活必需品に限って消費税率を10%以下に設定し、消費者の負担を軽減しようとするものです。
軽減税率を導入する際には、必然的にどの商品に軽減税率を適用するかという「線引き」の問題が生じます。対象品目を多く設定しすぎると、税収が減少し、消費増税を行う意義が薄れかねませんが、一方で、品目を絞りすぎると、消費者の負担を軽減するという目的が十分に達成されなくなるからです。
与党内では、食料品について、①レストランなど外食も含めて軽減税率を適用するという案(1兆3000億円分の財源が必要)と、②精米と野菜や精肉などの生鮮食品、ミンチや刺身などの一部加工食品のみに軽減税率を適用するという案(4000億円分の財源が必要)が対立し、互いに譲らない構えです。
①の案で問題となるのは多額の財源が必要という点ですが、②の案では例えば牛乳や豆腐、ハムといった加工食品は範囲外と分類され、同じ加工食品の間での線引きの難しさと不公平が生じます。また、こうした分類に対応した仕分けやレジシステムの導入などに多額の費用がかかり、かえって価格が上昇してしまう可能性があります。
なにより、軽減税率制度は、所得の高い消費者も含めて一律に負担を減らす制度なので、より多くの恩恵を受けるのは食料品を多く購入できる高所得者層で、低所得者層への効果はわずかです。本来負担を軽減すべきなのは低所得者であることを考えると、不十分な制度と言わざるを得ません。
◆真の再分配政策とは
消費税は、全ての人が一律の税を負担するのが特徴です。そのため、税率が上がると、低所得者ほど負担が大きくなり、消費が低迷する傾向があります。従って消費増税が経済に与える悪影響を是正するためには、低所得者への所得の再分配をセットで行うことが重要です。
私は、2四半期連続でGDPがマイナス成長に陥っている今のような情勢では、消費増税は凍結すべきだと訴えてきました。ただ、仮に増税を強行するのなら、低所得者への再分配を重点的に行える給付付き税額控除と、総合合算制度を導入すべきだと考えています。
給付付き税額控除とは、社会保障給付と税額控除を組み合わせたもので、所得が課税最低限度額以下の人には給付金を支給する制度です。
また、総合合算制度とは、医療・介護・保育等に関する自己負担について、各々の制度ごとではなく、家計全体をトータルに捉え、自己負担の合計額に上限を設定するものです。
低所得者に給付を行い、同時に負担を抑制するこれらの制度は、再分配政策として十分に機能するため、増税の救済策として最善の策と考えます。
与党内では軽減税率一本で議論が進んでおり、これらのオプションは早々に見送られましたが、私としては、真の再分配策ともいうべきこの2つの制度を、政府に対して引き続き強く主張していきます。(了)
スタッフ日記「迷路みたいな…」
業務上、名前の確認など、電話で字を伝達することがよくありますが、難しい字というのも時にはあります。
最近まで私にとってのクセモノは「郎」という字でした。
「たろうさん」「いちろうさん」などは、どちらかと言えば「郎」を使うほうが多いようですが、「朗」をお使いの方も結構いらっしゃいます。それに、日本で一番有名な「いちろうさん」、野球のイチロー選手の本名が「鈴木一朗」であることを考えると、「普通の“一郎”さんですね?」とは聞きがたく、かといって「朗らかではないほうですね?」と聞くのはあまりにも失礼です。
「良い+おおざと」など部首名での説明も伝わりづらいし、熟語にしてもわかりやすくて適当なものがなかなか見つからないし…、と思っていたところ、最近、見つけました。「桃太郎」です。これならばほとんどの人が知っているし、「朗」と間違えることもありません。「桃太郎の“郎”ですね?」これでようやく「郎」は解決しました。
しかし、何と言っても私たちにとっての最大の強敵は馬淵澄夫の「淵」という字です。
熟語で思いつくのは「深淵」くらいですが、一般になじみ深いとは言えません。そういえば困った挙句、「サンズイに…」と言いかけ、でも右側の「つくり」の部分を説明できず、「…迷路みたいになっている字です」と言ったこともありました(当然伝わりませんでした)。 また、どうにか字を伝えるのに成功しても、複雑すぎる形状のためか、「書く」という段階になるとさらに1つハードルが上がってしまいます。
「淵」という字をうまく伝える方法、何かないものでしょうか…??(シズ)