第880号 文化財を守るということ

2019年4月20日 (土) ─

 15日、パリのノートルダム大聖堂で火災が発生し、大きな被害が生じました。フランスの象徴とも言うべき文化財が焼損した今回の火災は、世界遺産を始めとする多くの文化財を抱える奈良の国会議員として、あらためて文化財を守るということについて考えさせられるものでした。

◆文化財を守るために
 日本では昭和24年、修理中だった法隆寺金堂が失火により一部焼損したことをきっかけに翌年文化財保護法が成立し、文化財の保護が図られてきました。しかし保護法の成立年には、国のシンボルの一つである金閣寺が放火で全焼するなど、文化財が火災に見舞われてきた歴史があります。

 ノートルダム大聖堂は、木造の屋根や尖塔部分が火災で焼失しました。日本の文化財建築の多くが火災に弱い木造建築であり、奈良県では都道府県で最も多い64件の国宝指定建造物がありますが、その全てが木造建築です。今後は、防火施設の再点検や、万が一に火災が発生した場合の消火ルート確保の再確認、や防火訓練実施の有無の確認、そして水害や土砂災害などを想定した「文化財ハザードマップ」のようなものを備えていかなければならないと思います。

 また、建築、彫刻などの文化財は、その貴重性などのランクで、国が指定するものの他に、県が指定するもの、市町村が指定するものと階層的に分かれており、地域の文化財の現状等が必ずしも統一的に把握されていない現状があります。文化財は、火災や水害ばかりではなく、近年増加する仏像の盗難や、所有者が売却して所在が不明になるなどの事態が生じています。

 国と自治体が連携を強化し、地域の文化財の保護に目を光らせる対策が求められています。特に奈良県は、奈良大学に日本で初めて文化財学科が設置されるなど、文化財保護の先進地域であり、今後も積極的な取り組みが期待されます。

◆いかに後世に文化を伝えるか
 文化財保護に関し、明治以降、日本の文化財が大きく失われた時期は2度ありました。1度目は、明治維新の際、政府が、奈良時代以降1000年以上にわたって庶民に根付いてきた、神も仏も一体に敬うという信仰を否定して、「神仏分離」を徹底させた時期です。この時期には、全国で「廃仏毀釈」の動きが広がり、多くの仏像、仏具などが破壊されました。

 2度目は、第二次大戦による戦災です。地上戦、空襲により、沖縄の首里城や名古屋城などの城郭建築を始めとする貴重な文化財が人命と共に失われました。

 そして、現在、私は文化財にとって3度目の危機が訪れていると感じています。それは、地方が急速に衰退し、過疎化、高齢化が進むことで、文化財、そして地域文化そのものを守り、継承していくことが困難になりつつある状況です。このままでは地域の伝統的な建築の街並みや祭りなどが永久に姿を消してしまい、我が国の持つ文化の多様性が失われてしまいかねません。平成が終わり、令和が始まろうとする中、いかに地域を守ることで文化を保護し、後世に伝えて行くか。政治家に突き付けられた重い課題だと受け止めています。

 

スタッフ日記「どうやって決めるか」

 75個の選択肢があって、その中からたった一つを選ぶとしたら、皆さんはどんな風にそれを決めるでしょう?

 統一選後半、東京23区内でも区議選が行われています。

 75、というのは最大候補者数の世田谷区で、定数50のところに75人が立候補しています。それに続くのが大田区と杉並区の70人で、50人前後の候補者のいる選挙区は珍しくありません。

 本来同列に考える話ではありませんが、例えば初めて行ったお店でランチメニューを選ぶとして、「あれにしようか?これもいいな」と落ち着いて考えられるのは、5種類くらい?せいぜい10種類くらいまででしょうか。特段政治家とつながりのない方が1人を選ぶとき、75人という数字はそのくらいムリのある数字だと思うのです。

 企業の人事であればエントリーシートや面接を通じ、時間をかけてその人を選ぶことができますが、地方議員の選挙は一週間、書類は選挙公報とポスター、街頭で配るビラくらい。75人の街頭演説をすべて聞いて回るのは現実的ではありませんし、公報やホームページを比較するのも困難です。

 「誰に入れたらよいかわからない」という理由で選挙に行かない方は都市部ではわりと多く、そうした意見は「いけないもの」とされがちですが、50人以上の顔が並んだ圧巻の公営掲示板を目の前にすると、さもありなん、と思ってしまいます。

 区割りをするなどして、「選ぶ人ファースト」の数になれば投票に行く人が増えるのではないかと思うのですが…。(シズ)

第880号 文化財を守るということ