第864号 インドネシア民間投資の課題

2018年12月8日 (土) ─

 12月5日から8日までバリで開かれたFIABCI(世界不動産連盟)のグローバルビジネスサミット2018に、インドネシアの招待を受けて、インベスターフォーラムでの基調講演のため二泊四日の行程でバリでのサミットに参加して参りました。

◆加熱するインドネシア投資
 インドネシア政府とは私が国交大臣時代の2010年、横浜APECで観光大臣会議や公共事業担当大臣会議などで関わりがありました。しかし当時のユドヨノ政権から現在のジョコウィドド政権に代わって、私も下野したこともあり政権との交流は途絶えていましたが、改めて今回元国交大臣として招待を受け、加熱する日本のアジア投資について、懸念される課題や期待について、基調講演を行ってきました。

インドネシアは現在世界第4位の人口を抱え、またジャカルタ含め国内主要都市の公共交通インフラは未整備の状態です。一方、我が国は人口減少社会を迎え、今日までの経験を生かした公共投資並びに官民一体となった都市開発についてのこれまでの知見を活かした進むべき方向性と課題について、示唆できる経験を有しています。

 特に高度経済成長時代には、我が国ではTOD(Transit Oriented Development 鉄道などの公共交通延伸による都市開発)という概念に基づく、大量輸送を可能とする公共交通機関の延伸拡大による都市の発展が形成されてきました。この奈良でも、私の地元たる近鉄奈良線主要駅である学園前は、その際たる街でもありました。こうした都市開発は、人口増大社会では都市部への人口流入を抑制し、また、駅やバス停を中心とした集客・利便施設、行政施設などの配置により、高度化した分散型社会の構築に寄与してきました。

 しかし、現在の人口減少社会の日本では、改めて見直すべきではありますが、インドネシアではまさしく往事の日本型開発が求められる時でもあります。

 一方、インドネシアは日本と違って土地の所有に関する制度が曖昧で、時間を含め開発コストが膨大となる課題も指摘されてきましたが、それでもインドネシアへの投資熱は高まるばかりでした。

◆課題を率直に伝える
 こうした中、多くのデベロッパーからの要望も耳にしていました。例えば日本と違って土地の保有コストが低いため、所有者が土地を手放しにくいとか、既に車社会が構築されている中で大量輸送装置となる鉄道の敷設にはあまり積極的でないなど、高度経済成長における日本モデルとの違いも明確になってきました。

 また、更に、そもそも土地所有の概念のないインドネシアでは、土地の利用権を意味するいわゆる「所有権」の確定が、制度上極めて困難であることもわかって参りました。そして何よりも途上国における最大の問題として、利権にまつわる取引について、行政への賄賂が未だに横行しているという現実がありました。

 さすがに、このような不正について公然と認める国家はありませんが、目の前の現実について、政権にも直視させ、邦人企業の海外投資の後押しを行うべく、今回私は、公共住宅大臣、建設・国土大臣、観光大臣、前公共事業大臣らとのバイ会談を行ってきました。議席のない今、民間外交の先頭に立つべく、人脈とネットワークを駆使して、TODならぬビジネスオリエンテッド政治家(BOP:Business Oriented Politician)として、更に邁進して参ります。(了)

 

森ちゃん日記「地域による活用術」
 増え続ける全国各地の空き家対策について、大和郡山市では2016年より地域の防犯・防災の観点から空き家の実態把握とその調査を消防団に委託し、全国に先駆けた取り組みが行われています。高齢化に伴い増加する空き家は、防犯上の問題だけではなく、災害時には倒壊を伴う二次災害へと被害が拡大する恐れがあります。

 特に、災害時における情報収集の際、行政は各市町村全体の被害の把握を最優先するため、地域に住む高齢世帯、一人暮らし世帯などへの被害情報は、自治会レベルで判断し行動に移さなければなりません。しかし、こうした日常的な地域の繋がりこそが非常時における人命救出において重要な役割を果たします。大和郡山市の対策は、自治体独自や民間業者ではなく、より地域の状況に精通している消防団を活用することによって日常的な視点からの防災へと繋げています。

 奈良市内に所属する987名の消防団員の日常活動にも今後様々な変革が求められます。防火・防災における活動が多様化する中で、地域の自主防災組織との連携、地域別における消防団の活動範囲の周知など、高齢化に伴う団員数の減少を、新興住宅との連携を図り、地域による活用術から繋がりの組織化を図っていかなければならないと感じます。

第864号 インドネシア民間投資の課題