第835号 減税断行こそ必要

2018年5月19日 (土) ─

 16日に内閣府が発表した今年1月から3月までの実質国内総生産(GDP)成長率は、前期比マイナス0.2%、年率換算でマイナス0.6%となりました。

◆注目すべきは消費の減退
 マイナス成長となったGDP成長率の統計で着目すべきは内需の落ち込みです。GDPを構成している個別の要素がどれだけ全体に寄与しているかを示す寄与度を見ると、外需(輸出)がプラス0.1%と堅調であるのに対し、内需はマイナス0.2%であり、これが全体のマイナスに直結しています。

 日本経済は内需が60%を占める内需牽引型経済であり、また、内需は国民の実際の日々の消費そのものです。戦後最長レベルの景気拡大と政府がいくら喧伝しても、現状で一般国民に景気回復の実感が全くないのは、生活における日々の消費活動が活発化していないためなのです。

◆使えるお金が減っていく
 政府の経済政策を好意的に捉える識者の中には、今回のマイナス成長は一時的なものであり、4月以降は消費も回復していくだろうという意見が見られます。しかし私は、国民の負担を増加させる今の政策が続く限り、個人消費の劇的な回復は難しいと考えています。消費税の8%への引き上げ後、消費は低調に推移しているのに加え、年金、保険料金の段階的な引き上げや、今後実施されるたばこ増税や出国税などの新しい増税が消費にダメージを与えることは確実だからです。

 例えば、奈良県内の65歳以上の高齢者が支払う介護保険料は、今年4月から平均で400円以上引き上げられ、月額で5670円と、これまでで最も高くなっています。こうした日常生活の中にある小さな負担増が続くことで、消費に回せるお金は確実に減っていくのです。

◆今こそ減税が必要
 そして、個人消費に決定的なダメージを与えるのは、来年10月の消費税10%への引き上げです。

 政府は消費増税の緩和策として、前回の増税時は禁止された、「消費税還元セール」を店側が行うことを認める方針と報じられていますが、一時しのぎの小手先の対策に過ぎません。消費増税は行わず、むしろ減税を断行することこそ、結果として消費を回復させ、経済成長につながっていくと考えます。

 消費税の減税を「夢物語」と主張する人もいます。しかし、消費税は必ずしもグローバルスタンダードな税制ではありません。アメリカでは消費税は存在せず、類似税の小売税も概ね低率で、10%を超える州はありません。また、先日マレーシアで政権に返り咲いたマハティール首相は、消費税廃止を公約に掲げ、実行することを表明しました。

 つまり、いかにして経済成長を図るかというのは各国の個別事情に基づいて判断されるべきものであり、経済格差が大きくなりつつある我が国において、低所得層に影響が大きい消費増税は、消費を冷え込ませ、経済全体でマイナスとなることは明確です。

 ここは思い切った消費税減税に足を踏み出し、個人の消費を伸ばすことで経済成長を実現して税収を確保する方向へと舵を切る必要性があることを、今一度声を大きくして訴えていきたいと考えています。(了)

 

森ちゃん日記「地域参加型教育の推進」
 学校運営や教育活動の現場に保護者や地域住民が参加するコミュニティスクール(学校運営協議会制度)が、全国で指定されている2,806校を中心に広がりを見せています。全体の2割にあたる指定小中学校では、子どもたちや学校が直面する課題、少子高齢化を背景に進む家庭や地域社会が抱える課題に住民全体で解決する取り組みを行っています。県内でも27の小中学校が文部科学省より指定を受け、奈良市でも11校が地域・家庭・学校が一体となったより良い教育の実践に向け取り組みを推進しています。

 しかし、自治会や関係団体の活動力によって地域差もあり、少子高齢化により進む過疎地域での学校教育の維持にはまだ課題が残ります。

 地域住民が教科書には載らないこの街の歴史や文化を子どもたちに肌で感じてもらう機会を通して、生まれ育った故郷に誇りを持ってもらう教育の大切さを感じています。そして、住民一人一人が地元を支える責任を自覚できる地域づくりと、地域に貢献することの大切さを感じられる街づくりが必要だと考えます。

 受け継がれた歴史と伝統文化を有する奈良にとって、今後は、地元企業との連携も視野に入れた地域参加型の教育こそが、20年先の奈良を考えることだと感じています。

第835号 減税断行こそ必要