第823号 年金、世代間の納得とは

2018年2月24日 (土) ─

 政府は16日、年金の受給開始時期について、「70歳超」も選択肢として盛り込んだ高齢社会対策大綱を閣議決定しました。

◆年金受給を遅らせる意義
 現在、年金受給の開始時期は原則65歳で、本人の選択により60歳から70歳と幅を持たせ、開始時期が遅いほど月々の受給額が増える仕組みとなっています。今回、政府は、受給開始時期を70歳超と出来る選択肢を設け、毎月の支給額をさらに積み増す方向で検討を進めています。政府は、全ての年代の人々が活躍できるエイジレス社会を目指すとしており、年金受給を遅らせる選択肢を、高齢者が働き続けるインセンティブと位置づけていると思われます。

◆年金不安と小手先の対策
 しかし、今回の改革案は、政府の掛け声とは裏腹に、国民の年金制度への将来不安を高めることにつながるのではないかと考えます。

 現在でも年金を遅らせて受給することを選んでいる方はごく少数であり、自らの健康や寿命を確実に見通す術がない以上、国民の多くは受給開始年齢が上がることを望んではいないと思われます。しかし、年金の受給開始時期はかつての原則60歳から65歳へと段階的に引き上げられており、さらに大綱では、「65歳以上を一律に高齢者と見る傾向は現実的ではなくなりつつある」と明記されています。また、高齢化と少子化により、年金の担い手が不足し、今のままでは支給水準を維持することが困難になっていくことも明らかです。年金受給を70歳以上に遅らせることは、当面は選択制でも、制度を維持するため、ゆくゆくは「高齢者」の定義が変えられ、原則70歳、又はそれ以上の受給開始へと引き上げられるのではないかと、国民が疑心暗鬼になるのは当然のことと言えます。

 特に、年金の将来を担う若い世代は、自分たちは老後に十分な年金が受給できないのではないかという不安を強く持っています。年金が抱える世代間の不公平感と負担のあり方という根本的な問題の是正を行わず、受給開始時期の繰り下げと積み増しといった小手先の対策に終始していては、到底、世代間、特に現役世代の納得は得られず、ひいては年金制度の危機を生じさせかねません。年金改革の肝は、世代間で年金制度への納得を維持できる制度をいかに構築するかにかかっています。

◆世代間の公平を実現する
 年金制度を維持するためには、若い世代の制度への信頼を高め、負担のあり方についても公平と再分配の視点を加味した見直しを行わなければなりません。

 その一つとして私が考えている改革案に、「年金への課税の見直し」があります。例えば現在の年金課税は、年金を拠出する際には課税ベースから控除されるのに加え、さらに給付の段階でも大幅な控除が認められており、高所得の高齢層が特に恩恵を受ける仕組みとなっています。これは国際的に見ても珍しい税制です。これを改め、高所得の高齢層には受給した年金について、相応の税を負担していただくことにより、その分、現役世代の減税を行い、年金を拠出している世代の所得を増やして消費を喚起するのも一案です。

 年金不安の解消には、単なる財源の数字合わせの議論ではなく、このような世代間の公平性と経済全体への影響を考慮した改革が必要と考えます。

 

森ちゃん日記「観光資源の一助となるか」
 昨年の特別国会に提出された旅館業法の改正案と今年6月に施行される新たな新法案「住宅施設宿泊事業法」により、全国の観光地において、とりわけ外国人観光客向けの宿泊施設のあり方が大きく変革しつつあります。

 2020年東京オリンピック開催が決まり、2016年2月に東京都大田区で全国初の民泊条例のもとで、民泊認定業者が誕生してから、その流れは全国に波及し、奈良県内にもその波は広がりつつあります。今回、新たなビジネス形態として、国と地方が連携して全国的に「民泊」が解禁される形となります。

 奈良は、2014年に県内の宿泊客室数が全国最下位となって以降、さまざまな取り組みで観光地奈良の世界への発信に力を入れ、奈良市役所前に建設予定の外資系ホテルの誘致などを成功させてきました。そして、今回の民泊対策においても、奈良県と奈良市では、条例案のまとめを進めており、住環境の悪化を懸念した制限や営業日数による制限を設ける他府県と比較しても、民泊施設の近くか同じ場所に管理者がいれば原則的に制限を設けない方針で調整し、幅広く新たな新ビジネスとして展開していくことが予想されます。

 また、この民泊新法案は、全国に増加する空き家対策にも一石を投じる政策として、奈良県内でも地方部を中心に、高齢化に伴い増加している84,500件もの空き家へのアプローチと両輪で、観光地奈良の飛躍が期待されます。地域に根付く課題としての空き家対策は、自治会などが把握している場合も多く、行政との連携も重要度を増して、街づくりを進めていくことが求められていきます。

 景観を守りつつも、埋もれている観光資源を掘り起こし、単に宿泊者を泊めるだけではなく、地元の文化を楽しめる形態で業界をリードする企業も誕生する中で、民泊は大型ホテルとは一線を画し、その地域、街並みに溶け込み、より身近に土地の空気感を知ることができます。奈良の文化、歴史のありのままを伝えることができる、街なかにたたずめる「民泊」の今後の行方に注目したいです。

第823号 年金、世代間の納得とは