第768号 原発21.5兆円の請求書
現在、政府では福島第一原発事故の賠償や廃炉にかかる費用に関する議論が着々と進んでいます。
その額は、従来想定していた11兆円を大きく上回る21.5兆円にのぼります。政府はこの一部を電気料金に上乗せして、国民負担とすることを検討しています。
◆誰が責任を負うべきか
原発事故が起きた際、事故の責任を誰が負うべきなのかは大切な議論です。
対象を順番にあげるならば、以下のようになります。
① 電力会社(過去の経営責任も含む)
② 株主
③ 銀行などの債権者
④ 電力利用者(運営会社の管内の利用者)
⑤ 国民
本来は、運営責任の主体者である①電力会社、そして②株主、それから③銀行などの債権者が責任を負わなければなりません。
国民に負担を求めるのはその次の話です。
しかし、現在の政府の議論は、責任の所在については棚上げにしたまま、④電力利用者の電気料金への上乗せや、⑤すべての国民への税負担を前提として進められようとしています。
それだけではなく、電力の自由化で新たに参入した原発とは関係の無い電力事業者にも、負担を求めようとしていますが、このような負担の押しつけありきの議論では、とうてい国民の理解を得ることはできません。
今回の事故においても、①電力会社の経営責任を明確にし、費用を確保して、賠償・廃炉にあてるべきです。またその際、②株主や③銀行などの債権者が優先されることを防ぐシステムが必要です。
◆凍土壁も効果見られず
福島第一原発をめぐる問題は、費用に関するものだけではありません。
政府は原発建屋への地下水の流入を防ぐため、原発建屋の周囲の土を凍らせる「凍土壁」の建設を計画し、今年3月に凍結を始めました。
しかし、すでに345億円の国費(=税金)が投入されたにもかかわらず、いまだに凍土壁は効果が確認されていません。
これに対し、政府は、凍土壁は未完成の状態で、完成しないと効果が分からないという説明を繰り返しています。
ところが、ほぼ完全に凍ったとされる部分についても、遮水効果が十分に見られていないことを示すデータもあるなど、政府の「完成していない」という説明は、単に効果が上がらないことのまやかしにも聞こえます。
私は事故直後から、より現実的な「粘土壁」による遮水を主張してきました。地下水位の変化を早急に検証し、もし凍土壁に効果がないのであれば、ただちに粘土壁など他の手段に切り替えるべきです。
このように原発事故の処理は、費用面・工法面ともに行き詰まりを見せています。将来的にさらなる費用の増大も見込まれる中、国民負担を議論するならば、まずは合理的で、国民が納得できる方針転換と説明が速やかに行われなければなりません。(了)
スタッフ日記「タラレバ被害者の声」
マンガの「逃げるは恥だが役に立つ」がドラマ化され、12月20日の最終回を目前に大変注目されていますが、私としては1月からドラマの放送が始まるマンガ「東京タラレバ娘」がどう実写化されるのか気になってしかたありません。
タラレバばかり言ってたらこんな歳になってしまった、この一言から始まる物語。
「もしあのとき~ だったら…」「きっと~すれば…」と「たら」「れば」をつぶやきつつ、手っ取り早く酔っ払いたいと居酒屋で「レバ刺し」と「たら白子ポン酢」を食べて飲む33歳の女性3人のせつない恋や人生のむなしさがおもしろおかしく描かれています。
1巻発売直後からホラーより怖いと各所から悲鳴が聞こえ、心をブッ刺された被害者が急増しています。
主人公たちと同い年の私も性別を超えて、もういたる所で心に刺さる刺さる、もうキリキリと痛いくらいで、見事に被害者の仲間入りをしました。現在は被害者をさらに増やして仲間にしてやろうと、日夜各所で布教に勤めています!
このタラレバ娘の中では、もっぱら結婚についての話題になっていますが、「たら」「れば」それ自体は、性別・年齢を超えてどんな人でも考え出してみたらキリがないことかもしれません。
一つひとつの選択、そのときの自分が選べなかったもの、選ばなかったものが「たら」「れば」になって残ってゆくのならば、人生の中では増えてゆく一方なのかなぁ、そんなことを考えつつ原作マンガをまた読み返しています。
ぜひ皆さんも被害者の会に仲間入りしてください!(ハム)