第719号 軽減税率で失ったもの
16日、与党は税制改正大綱を決定し、再来年4月の消費税増税の際の負担軽減策として軽減税率の導入を決めました。しかしその内容は多くの疑問と課題が残るものでした。
◆不明確な線引き
軽減税率の導入は、「酒類、外食を除く食品全般」と「新聞」の税率を8%に据え置くというものです。
これは、例えば、牛丼チェーン店で牛丼を注文し、持ち帰れば8%、店舗で食べれば10%、新聞も定期購読すれば8%、駅などで買うと10%となるということで、消費者にとって区分けが非常に分かりづらいしくみです。
また、増税の影響を大きく受ける、所得の低い層が必要としているのは、生活上必須の支出、例えば水道代や電気代の負担軽減です。こうした公共料金への軽減税率適用も見送られたので、水道水には10%、ミネラルウォーターには8%の税率が適用されるというあべこべの事態が発生しています。
一方で、子育て給付金の廃止や、たばこ税の増税が検討されているという報道もあり、このままでは軽減税率導入のしわ寄せが色々な所で生じかねない状態です。
◆消費税10%超への布石
軽減税率の適用により、1兆円にのぼる財源が必要となりますが、その財源確保策は先送りされています。
与党の税制改正大綱では、軽減税率の恒久財源確保や、「消費税制度を含む税制の構造改革や社会保障制度改革など(略)について検討を加え、必要な措置を講ずる」と明記されています。これは社会保障費をカットし、消費税10%超への増税も視野に検討を進めると宣言しているようなものです。選挙対策ともいえる軽減税率導入の裏で、官邸と財務省の間で、国民不在の取引が行われています。年明けの国会ではこの点を厳しく質(ただ)していきます。
◆原点に立ち返った議論を
政府与党は17日、低所得の高齢者1250万人に3万円の臨時給付を行う案を打ち出しました。 しかし、高齢者以外でも、失業などで生活が苦しい方はたくさんいらっしゃいます。高齢者だけに現金を支給するというやり方は、選挙対策の「バラ撒き」ととらえられても仕方ありません。本来検討されるべきはこうした場当たり的な対処ではなく、将来にわたって持続可能な負担軽減策のはずです。
民主党としては、負担軽減策として、一定額までの所得税の控除を行い、所得が基準に達しない方には給付金を支給する「給付付き税額控除」を主張しています。
これは3年前に民主・自民・公明の「3党合意」においても、選択肢の1つとなっていました。しかし、政府与党内では、軽減税率導入ありきの議論が進められるばかりで、給付付き税額控除よりも軽減税率が優れている点についての十分な説明はありません。
様々な矛盾が明らかになっている軽減税率の導入をこのまま進めるよりも、社会保障の充実という原点に立ち返り、3党合意で検討課題とされた、給付付き税額控除や、医療・介護の負担額に上限を設ける総合合算制度も視野に入れた議論を、年明けの通常国会で行うべきだと考えます。(了)
スタッフ日記 イチョウのクリスマス
パリでは地球温暖化問題を話し合うCOP21が開催されましたが、温暖化の影響か今年は12月に入っても暖かい日が続いています。平均気温は全観測地点で平年と比べてプラスとなり、夏日を記録した町もあったようです。東京でもまだ紅葉が見られるところもあり、道行く人の目を楽しませてくれます。
さて、紅葉と言えば童謡にも唄われているように、モミジやカエデといった真っ赤な葉を連想される方が多いと思いますが、東京都心部においては、圧倒的に黄色、すなわち、イチョウの葉が中心です。よく晴れた冬の青空と、天高くそびえるイチョウの黄葉のコントラストは非常に美しいものです。
イチョウは昭和41年の住民投票により東京都の木に制定されました。候補となったイチョウ、ケヤキ、ソメイヨシノの3木のなかで、選定委員ではケヤキを推す人が多かったものの、投票ではイチョウがダントツの1位だったそうです。都民はイチョウに対して、特別な思いを持っていたのでしょうか。
古代植物の生き残りといわれるイチョウは、絶滅危惧種にも指定され、日本と中国の一部だけにしか現存していません。公害や火にも強いため、日本では街路樹に多く使われており、今では多くの並木道が作られています。
12月下旬ころまでイチョウ並木の紅葉が続くようになってきた昨今、クリスマスツリーとしてイルミネーションで飾られる姿もよく見かけます。緑ではなく黄色いイチョウの木で飾られるのも、東京のクリスマスの風景として美しく感じます。(アタリ)