第699号 軽視許されぬ法的安定性

2015年8月8日 (土) ─

 7月26日に、官邸で重要な役割を担う総理補佐官が安保関連法案をめぐり、「法的安定性は関係ない」と発言したことについて批判が高まっています。

◆法的安定性とは何か
 法的安定性とは、「いったん定まった法律の内容や解釈は、簡単には変えてはならないという原則」のことです。行政の運営や人々の生活に関するルールが時の政権の判断によりころころ変われば、社会は混乱して、人々が法律に不信感を抱き、法治主義や法律による国家運営そのものが機能しなくなります。

 野球でたとえると、ど真ん中のストライクを審判が気分次第で「ボール」と判定することが出来るのと同じことです。これではもはやルールは存在しないも同様で、試合は成立しません。まして、憲法という国家の根本的なルールについての解釈を時の政権が簡単に変更してよいものではありません。この点で、政権中枢にいる総理補佐官の「法的安定性は関係ない」という発言は、法治主義の根幹に関わる問題発言です。

◆法的安定性を軽視する政府
 我が国の安全保障について考えるとき、歴代政府が維持してきた「集団的自衛権の行使は認められない」という憲法解釈は、法的安定性の観点から簡単に変更すべきものではありません。もし変えるのであれば、議論を慎重に行い、定められた厳格な手続きを経た上で行わなければなりません。

 安倍政権は憲法改正の議論を国民に示さず、閣議決定のみによって憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使は可能であるとして今回の安保法案を提出していますが、こうした姿勢はまさに、法的安定性を軽視するものです。総理補佐官の発言も、単に個人的な発言というよりは、安倍政権の憲法に対するスタンスを表していると言えます。

◆「正論」で対峙する
 安全保障法案についての与党議員の問題発言は総理補佐官だけにとどまりません。若手議員がツイッターに、反対活動を行う学生団体に対し、「(彼らの主張は)戦争に行きたくないという自分中心、利己的考えに基づく」という書き込みを行って強い非難を受けています。また、同じ議員が過去に「(国民主権・基本的人権の尊重・平和主義という)日本国憲法の三大原理は日本精神を破壊するもの」と発言していることもその後判明し、あわせて問題となっています。

 こうした発言が相次ぐのは、与党の中に「選挙で勝利して信任を受けたのだから、自分たちの政策を何がなんでも進める」という意思が強く働きすぎているから、と考えることができます。安保法案への国民の批判が高まっていることに焦りを感じ、ことさらに正当性を強調しようとするため、こうした発言が出てきてしまうのです。

 しかし、選挙での勝利は、国民からの白紙委任を意味するものではありません。今回の安保法案のように、憲法秩序を構成する基本的な原理・原則に反する法案は強く撤回を求めます。

 同時に、法的安定性や憲法理念を尊重した「正論」を提示し、単に失言を追及するにとどまらない国会論戦を進めて参ります。(了)

 

スタッフ日記「510人目の永田町の住人」
 国政のど真ん中、永田町ですが、実際の住人、まさに現在住んでいる人数はどれくらいだと思われますか?

 住民基本台帳には国会議事堂や憲政記念館などがある永田町一丁目に15人、総理官邸、議員会館等がある永田町二丁目に494人、合わせて509人が登録されています。永田町には町内会もあって、お祭りでお神輿を担いだり、地域でいろいろな活動をされているのは知っていましたが、そんなに住んでいる人がいたのかぁ、思っていたより多いなぁと少々驚いています。

 ちなみに、行政の中心、霞が関には一丁目から三丁目までで併せて2人、住民基本台帳に登録がありました。

 さて、何故こんなことを申し上げるのかといいますと、私、この8月末に永田町に引っ越して510人目の住人になる予定なのです。スタッフ日記で何度か私の引っ越し事情について書いてきましたが、ハクビシンとネズミに負け出ていくことになった前回の物件に続き、今住んでいる木造アパートが築60年の老朽化の為取り壊し予定となり、泣く泣く出ていくことになってしまいました…。

 さて、次はどこに住もうかなぁと物件を探していたら、なんと参議院会館と衆・参議長公邸の隣に掘り出し物の物件が!職住接近ここに極まれり、よしここだっ!ということで即決しました。

 職場と近くなることはもちろんですが、実は一番の楽しみは免許証の住所の書き換えです。永田町住まいの証、そんな気がして田舎者としてはワクワクせずにいられません。引っ越しが楽しみです。(ハム)

第699号 軽視許されぬ法的安定性