第689号 具体論見えぬ安保法制

2015年5月30日 (土) ─

 26日、集団的自衛権の行使容認や、自衛隊による国際貢献活動の拡大等が盛り込まれた安保関連法案が衆議院本会議で審議入りしました。27日からは「平和安全特別委員会」で質疑が行われています。

◆強調される平和と安全
 ここで改めて今回審議入りした安保関連法案がどのようなものなのか見てみます。

 まず、現行法制との一番大きな変化は、我が国の存立が危機に陥る事態の際には、我が国が他国から攻撃を受けた場合だけではなく、アメリカのように我が国と同盟を結んだ国が攻撃を受けた場合も、武力行使が可能になったことが挙げられます。

 そして、地域についても、我が国の周辺だけではなく、世界のどこでも武力行使可能となる予定です。状況によっては、他国の領土内であっても武力行使が可能であるという見解が示されています。

 安倍総理は一連の法案を、日米同盟をより良く機能させ、抑止力の強化になるものだとしています。

 一方で、これは平和主義の原則を変更するものではなく、湾岸戦争やイラク戦争のようなアメリカを中心とした国が当事者となる戦争に我が国が巻き込まれる恐れはない、と述べています。他国への空爆を伴うような軍事行動は、必要最小限度の実力行使とは言えないため、我が国では行えないというのがその根拠です。

 政府が自衛権の行使の例として挙げるのが、中東のホルムズ海峡に機雷が撒かれ、我が国の石油輸入ルートが脅かされた場合の機雷除去活動です。このような制限的かつ受動的な行動しか行わない以上、安全であるとの説明を行っているのです。

◆リスクと効果の説明がない
 政府のこれらの説明には、国民へのリスクの説明と我が国の安全を守る上での具体的な効果の説明が欠けています。

 とりわけ自衛官の負うリスクの説明は不十分です。政府の説明では、自衛隊は戦闘が行われていない地域での支援活動が予定されているため、隊員も安全であるとのことです。

 しかし、戦闘が行われていない地域にいきなり攻撃が加えられる事態は現実に発生しています。イラクのサマワに自衛隊が派遣された時がその例です。このようなリスクを提示せず、単に安全であると繰り返すだけでは、議論の前提が成り立ちません。

 また、政府の説明では、我が国の領海を侵犯する不審船などに対処するための法改正であることも挙げられていますが、どうすればこの法案で我が国の領海や領空を守れるのかについての説明は具体的ではありません。

◆現実的な危機への対処を
 現時点でこの法案のリスクと必要とされる効果の十分な説明がない以上、それを鵜呑みにするわけにはいきません。今、現実にある危機への対応としては、むしろ民主党が対案として提出した領海警備法案等で、わが国を取り巻く脅威に現実的な対処を図っていくことが必要です。国民の疑問や懸念に答えないまま拙速な成立を狙う政権には、厳しい態度で望んで参ります。(了)

 

スタッフ日記「休日の楽しみ方」
 5月も終わりに近づき、いよいよ夏フェスや野外フェスと呼ばれる音楽イベントが開催される時期になりました。

 大学の頃は、ライブ会場の設営のアルバイトをするほどライブが好きで、毎年野外フェスに参加していました。

 昔は野外の大規模ロックフェスが幾つかあっただけなのですが、今や全国各地いたるところで様々なフェスが開催されています。

 奈良でも6月13日から28日まで「ムジークフェストなら」が予定されています。クラシックを中心としながらも、国内外の多種多様な音楽にスポットを当てた、今年4回目の若い音楽祭ですが、開催まで2週間程度となり、現在奈良市内には横断幕やのぼりがたくさん設置されています。

 フェスと言えば音楽イベントのイメージが強いのですが、今やインドア派も楽しめる文科系フェスも開催されているようです。

 例えば湖畔のキャンプ場に個性豊かな本屋さんや季節の食材を存分に楽しめる食べ物屋さんなどが出店され、思わず深呼吸したくなるような大自然の中で本を選んだり読んだりできるブックイベント。また森や川、岩場などバリエーション豊かなロケーションに設置された特設スクリーンで、長編映画やショートフィルムを上映する野外映画フェスなどがあるようです。

 普段は家の中や屋内ですることを、大自然の中で草や土の匂い、月や星の煌めきと一緒に楽しむと、心も体もリフレッシュできる気がします。休日には様々なフェスに出かけて、お気に入りを見つけるのもいいかもしれませんね。(お松)

第689号 具体論見えぬ安保法制