第609号 的外れな復興法人税廃止 

2013年10月12日 (土) ─

 来年4月に消費税率を3%引き上げる閣議決定がされ、いよいよ消費増税に対する動きが出てきました。懸念されるのは増税が景気回復への足かせとなることです。そこで登場したのが復興特別法人税の廃止前倒し、すなわち、法人への減税措置です。今回は、この復興特別法人税廃止から、あるべき経済対策について考えます。

◆復興特別法人税とは 
 復興特別法人税は、2012年4月1日から3年間の事業年度に対し課税するものです。恒久的な法人税減税を実施した上で、税額の10%を追加的に徴税するもので、2014年度9145億円の税収が見込まれています。 

 一方、復興増税は、法人税だけでなく、所得税と住民税にも行われています。

◆大胆な財政政策の必要性 
 消費増税を予定通り実施した場合には、景気の腰折れを回避するため、大胆な財政政策を実施すべきというのが私のかねてからの主張です。 

 消費増税が行われる来年度には、これまで景気を牽引してきた復興需要が減速していきます。また、消費増税は低所得者層を中心に打撃を与えることとなります。 

 そこで、来年度以降、例えば5年間にわたり給付金などの形でGDP比1%程度(5兆円)の大胆な低所得者対策を実施し、軟着陸を図ることも一案だと考えます。毎年5兆円などとんでもない規模だと思われるかもしれませんが、来年度に税収で約7.5兆円に相当する消費税引き上げ、2015年度に税収で約5兆円の消費税引き上げを行うため、2016年度以降は、計12.5兆円、現在よりも税収が増えることになります。景気情勢にもよりますが、毎年5兆円程度の給付措置を行っても全体で見れば、「十分な増税」となります。

◆規模と対象と継続性 
 規模の観点から言えば、消費増税に比べて、復興特別法人税廃止の規模は小さ過ぎます。さらに、継続性の観点から見ると、消費増税が恒久増税であるのに対し、復興法人税廃止は来年度には終了する増税分の廃止前倒しにとどまります。 

 また、復興特別法人税の廃止は、そもそも利益を出している比較的業績が好調な法人が対象であり、納税している企業は大企業に偏っています。したがって、仮に、「廃止により給与の増加に結びつく」という主張を受け入れたとしても、対象となる家計は比較的、所得が安定している層だと考えられます。一方、消費増税による打撃を受けるのは低所得者層です。すなわち、復興特別法人税の廃止は、本来対策が必要な対象(低所得者)とは異なる者(大企業やそこで働く者)への的外れな減税ということになります。 

 消費増税対策のポイントは、「対象と規模と継続性」です。復興特別法人税の廃止は、対象・規模は、不釣り合い、継続性は無い、ということになります。 

 法人税で議論をするのであれば、継続性の観点から、恒久的な法人税減税まで踏み込む必要があり、対象で議論をするのであれば、まず復興特別所得税、住民税の廃止、さらに、低所得者層に対する継続的な給付措置まで踏み込む必要があるはずです。経済対策の肝は、「対象と規模と継続性」。これに尽きます。(了)

 

スタッフ日記「おばあちゃんの栗入り赤飯」 
 8月、9月にインターンにきていた大学生です。知らない事だらけで過ぎた夏はあっという間にすぎ、10月に入りました。やっと「栗」の季節がやって来ました!私は食べ物の中で一番栗が好きです。 

 私の栗好きは、幼稚園年少の時、初めての運動会で祖母が栗の入った赤飯を持って応援に来てくれたことがきっかけで始まりました。 

 私は昔から走るのが遅かったので、運動会が大嫌いでした。その日も当日の朝に「行きたくない。休む。」とごねて母を困らせてしまったのを覚えています。 

 嫌々ですが母に説得されて運動会に行き、仕方なく競技に参加しました。そして何とか午前中の競技が終わり、家族の元に駆けつけると、祖母がニコっと笑いながら栗入り赤飯で迎えてくれました。赤いご飯の中に大きな栗がゴロゴロと入っていて、びっくりしました。 

 祖母がわざわざ親戚の栗林まで栗を拾いに行き、朝早くから作ってくれた栗入り赤飯は、私が勇気を出して午後からも頑張れるように、という思いが伝わってきて、子供心になんとも言えない特別な味がしたような気がしました。 

 それから祖母は毎年欠かさずに赤飯を作って応援に来てくれ、私も大嫌いな運動会を頑張ることができました。だから私は栗が大好きです。この季節になるとその頃の思い出が蘇り、心が温かくなります。 
これまで祖母の栗入り赤飯から「おばあちゃんやみんなが見守ってくれている」と勇気をもらい、嫌なことにも挑戦してこられました。そして、これからも挑戦し続けようと思えるようになりました。(ユリリン・モンロー)

第609号 的外れな復興法人税廃止