第577号 電力システム改革
8日、経産省の有識者会議が電力システム改革の報告書をまとめました。
これまで電力会社が地域で独占していた家庭向けの電力販売を3年後をめどに解禁する「小売り全面自由化」と、電力会社から送電部門を5~7年後に切り離す「発送電分離」を柱としています。今後、与党内での議論を経て、改正法案が今国会に提出される見込みです。
◆電力改革の必要性
福島第一原発事故の際、電力会社の垣根を越えて電力を融通する体制が不十分なため「計画停電」で対応するしかなかった等、電力会社が「安定供給のため」と主張してきた発送電一体・地域独占の仕組みの脆弱性が明らかになりました。
また、太陽光、風力などの再生可能エネルギーをはじめとした多様な電源の参入を促す上でも、送電網を公平に使えるようにする仕組みの整備が必要です。
これらの事情を踏まえ、多様な電源を生かした効率的な電力ネットワークをつくるため、昨年、民主党政権は、家庭向けを含めた電力の小売りの全面自由化と、大手電力会社の発電部門と送電部門を切り分ける発送電分離を実現する方針を決め、検討を進めていました。今回の報告書は、民主党政権下での議論の延長線上にあります。
◆これからの課題
今回の報告書は、電力会社の発電部門と送配電部門を別会社にする「法的分離」を明記するなど改革を前進させる内容となっています。
これからの課題は、自由化に向け、いかに適正な競争環境を整備するかです。現在、コスト競争力が高い石炭火力等のベースロード電源は、大手電力会社がほぼ独占しており、新規参入の事業者はコスト面で不利な立場に置かれています。このまま規制のみを撤廃し、自由化を進めれば、大手電力会社による「規制無き独占」の状態が生じ、結果として電気料金の値上げに繋がりかねません。
当面の間、大手電力会社に対する料金規制を維持しつつ、例えば、再生可能エネルギーの中でもコスト競争力が高いとされる風力発電に対し、送電網整備に対する公的支援、系統側への大型蓄電池設置等の施策を講じて新規参入事業者がコスト競争力をつけていくよう環境整備を図る必要があります。
◆改革を経済の活力に
有識者会議の委員長を務める伊藤元重教授は、「電力の問題はしっかり改革すれば、日本の経済の活力になる」と電力改革の意義を強調しています。
通信事業が、1985年に国有事業から民営化され、その後、通信料金やサービスの競争が生じ、携帯電話の登場などの新しいイノベーションが生まれました。電力についても、競争を促すシステムの導入により、利用者の選択肢を増やし、原発への依存度を引き下げながら電気料金を抑制し、かつ新しいイノベーションにより新しい産業を生み出す、そのような可能性が秘められています。電力システム改革を、「原発事故によって明るみに出た様々な問題への対処」といった捉え方だけでなく、危機をチャンスに変え、新産業創出に向けた新しいチャレンジと捉え、未来の姿を念頭に置いた改革姿勢を政治はとるべきと考えます。(了)
スタッフ日記「春の訪れ」
2月特有の、厳しく冷え込む朝晩には得意技の「着込み」で備えている私です。
奈良では、朝の冷え込みに手をかじかませながら駅立ち(ニュース配り)をするのが日課です。北海道出身の私ですが奈良の冷え込みには驚き、地面より伝わってくる盆地特有の底冷えと、家の中でも冷えてしまう感覚に苦労しています。
しかし、この時期になると心温まる助っ人たちがやってきます。おかげで朝の駅立ちではいつもより多くの人数で、たくさんの方にニュースを配ることができています。
その心強い助っ人とは2月からの春のインターン生4人です。慣れない動きながらも、通勤の皆様の邪魔にならないように間合いを調整しながら、1人でも多くの人に読んでほしいとの思いで一生懸命ニュース配る姿には寒さを忘れさせてくれる一瞬があります。
実は、私もインターン生として3年前に馬淵事務所にお世話になった経験があるため,目の前の学生たちのひたむきな姿に過去の自分が重なることがあります(自分で自分を「ひたむき」と言っているようで何だか面映くなりますが)。
そして今度は事務所スタッフとして「まぶちイズム」を次の世代へと受け継いでゆく立場です。私自身2ケ月のインターンの経験が結果的に大きく人生を変えることになったため、彼らにも何がしかの人生の糧を得てもらいたいという気持ちで誠心誠意接する心構えです。
責任を持って1つでも多くの事を吸収してほしいと逆に必死になってしまっている私もまたインターン生から何か吸収できればと思います。(特命係長)