第562号 急げ!国民会議
社会保障と税の一体改革は、三党合意により8月10日に関連法案可決となりましたが、与野党の新執行部体制が整った中、いよいよ具体的な推進が求められます。
三党合意の中でも、重要な位置づけとなっている社会保障については、成立した社会保障制度改革推進法にて、「内閣に国民会議を設置して法律の施行後1年以内に法制上の措置を講ずる」とされています。法律の施行された8月22日から1年以内すなわち来年の8月21日までに少なくとも具体的な内容に関する法案提出が求められるということになります。
◆国民会議とは
国民会議は、総理が任命する20人の委員で構成される会議体で、社会保障について積み残された課題を審議します。政府は9月7日に国民会議に関する関係2政令を閣議決定し、定足数や表決数や設置期限などを定めました。
この国民会議に国会議員が参加してはならないと法律で規定してあるわけではありませんが、岡田副総理などは学識経験者で構成すべきだと発言しています。この言葉の裏には、議員や関係団体の参加を認め始めると収拾がつかなくなるのではないかとの判断が垣間見られます。
この国民会議の議論の対象は、改革の基本方針で示されている社会保障4分野(年金、医療、介護、子ども子育て支援)にかかる制度改革と、新年金制度(公的年金制度)と高齢者医療制度の「別格二問題」と称される課題についてです。
とりわけ、公的年金制度と高齢者医療制度については国民会議での議論の中心となるものでもあり、来年8月21日の期限に向けてできる限り早く始動されることが求められます。
◆政争の具
しかしながら、三党合意で来年8月21日までの法案提出を確認された国民会議について、自民党安倍総裁は「解散の後の設置」を強く主張しています。一方、公明党山口代表は「選挙に関係なく早く設置することが望ましい」と述べています。こうした状況の中、国民会議の設置に向けての与野党協議は一向に始まる気配が見えません、残念ながら、またしても社会保障改革が政争の具にされかねない模様です。
外交・安全保障や社会保障などの普遍的な課題や国民生活に関する課題については、政権交代の有無とは別として継続した議論がなされるべきであるとの意見が与野党問わず広がりを見せつつあります。しかし、党首選が終わり、任期満了まで1年を切ったところで野党第一党は「解散」の合唱しかしなくなったというのが実情ではないでしょうか。
かつて自民党政権でも見られなかった「純増税」という決断を与野党三党で行い、国民に負担を求めて行くわけですから、当然その使い道として示されてきた社会保障の改革については、三党が協力して、全力で国民の前にまず示すのが本来の道筋ではないでしょうか。その方策は、具体的に国民会議として決められてきたのですから、三党によっていち早く会議を立ち上げ、議論の開始を強く望みます。(了)
スタッフ日記「ノーベル賞」
久しぶりに喜ばしいニュースが飛び込んできました。
8日、山中伸弥京大教授がノーベル賞を受賞されたとの発表がありました。日本人の受賞は19人目、医学・生理学賞としては利根川進教授以来2人目なのだそうです。
ご夫婦そろっての記者会見や報道を見ていると、奈良市ゆかりの方とのことで、50歳でのスピード受賞と併せ、喜びを感じました。会見の中で奥様が「良かったね」という言葉に続けて、「とても疲れているのに走ろうとする、走っているのを見かけたらほどほどに、と声をかけて欲しい」と仰っているのを聞いて、馬淵との共通点を見たような気がしました。
教授は今回の受賞決定を「国の支援があってこそ」、そして「まだ仕事は終わっていない。新しい技術の実用化には10年、20年かかる。短期の成果だけで評価するのは、本当の意味での大きな研究には向かない」と語っておられました。京大のiPS細胞研究所の職員200名のうち、180名は短期の研究費で雇用していて、「5年後にポストがあるか判らない状態で、みんなに大変な思いをさせている」のが実情なのだそうです。
かねてより日本の頭脳の海外流出が問題になっており、日本人のノーベル賞受賞者の方でも海外の研究機関での成果が評価された方が多数いらっしゃいます。
今回、国内の研究室からの成果が花開き、成し遂げられた偉業を喜ぶと同時に、本来、学術研究に対してはこの国の成長戦略の基礎と位置づけ、さらに長期的に研究を支援する枠組みが必要だと痛感しました。この国の将来に向けて。(スギ)