第554号 求められる国家の規律
この半月、国内がオリンピックでの選手達の活躍に沸く一方で、日本と周辺諸国との間では緊張感が高まる事件が続発しました。
2012年は米仏露中韓など世界の名だたる国のトップが代わる年です。こうした時には国民の意識が内政に向かうため、ナショナリズムに偏った政策が打ち出される可能性を私はかねてより指摘してきましたが、そのことが現実となりました。
◆ロシア・韓国・香港
7月3日、ロシアのメドベージェフ首相が2010年に続く2度目の国後島訪問をしました。日本政府は再三訪問中止を要請してきましたが、無視された格好となります。もちろん、直後に外務省は駐日露大使を招致のうえ抗議し、7月28日に玄葉外相が訪露した際にも、日本国としてラブロフ外相に遺憾の意を伝えましたが、先方からは抗議は受け入れられない旨の反論がありました。
そして8月10日、韓国の李明博大統領が竹島に上陸しました。竹島は日本固有の領土であるにもかかわらず、1952年から韓国の「法的根拠のない支配」が続いています。自民党時代も含め、戦後長く続いてきた弱腰外交の結果、いまだに領有権を脅かされ続けているのです。日本政府としては厳重に抗議をし、国際司法裁判所への提訴を検討していますが、この提訴は相手国が応じる姿勢を示さなければ審議がなされません。これまでと同じように今回も韓国側が応じるとは思えないため、実質的には決着は難しい状況です。
終戦記念日の8月15日には香港の活動家が尖閣諸島の魚釣島に上陸しました。現地では海上保安官と警察官が巡視艇で上陸の阻止を試みましたが、最後は強行突破されました。逮捕された14名の容疑は入管法違反のみで、強制送還されるとの見方も出ていますが、逮捕時の公務執行妨害の有無についても事実関係の精査をし、国家としての毅然とした態度が求められます。
◆必要なことは何か
このような同時多発的な緊張状態において最も問われるのは外交手腕と政府の覚悟です。
私は2010年の11月に尖閣諸島での中国漁船衝突事件のビデオ流出問題で問責決議を受け、翌11年の1月の内閣改造に伴い国土交通大臣を退任しました。この事から、海上警察権の強化に関し、強い思いで取り組んできました。大臣時代に指示をした海上保安庁法の改正は衆議院を通過し、今は参議院で審議待ちとなっていますが、これが通れば領海内の外国船舶に対し、より毅然とした態度で臨むことが可能になります。
しかしナショナリズムの高揚感に囚われた拙速な判断も控えるべきです。2010年の中国漁船事件では、全く無関係のフジタの在中邦人4名が拘束されました。この4名の命は当時、日本政府の判断いかんで一瞬にして失われる可能性のある命でした。同じような事が再び起こる可能性も私は2年前から指摘し、警告してきました。
今回の香港人活動家についても強制送還ではなく、より強硬な態度で臨むべきという意見が見られます。毅然とすべきなのは言うまでもありませんが、一方で在中邦人がどのような状況に置かれるのかを考えた上で、政府は慎重な判断をする必要があります。
外交は相手のあることゆえ、当然戦略的思考が必要です。私が作った法案を1日も早く審議し、我が国の領土を守る基本姿勢を示さねばなりません。 (了)
スタッフ日記「五輪の影響」
例えばF-1グランプリを観た翌日は雑踏で人を追い越したくなる、自分はそんな影響を受けやすい人間です。
今回の14日間のオリンピックにも当然影響受けました。
自分に課したのは2012サマー大掃除。男子個人総合大掃除、と名づけました。
実は昨年末掃除をサボっため、床に寝そべってオリンピック中継を観ていたら、動く物を発見してしまったのです。
それは梅雨を経過し、重みを増したホコリの塊でした。扇風機にあおられ、荒野の草玉のように転げ回っていました。
暑い。掃除機をかけるだけで汗が滴り落ちる、カーリングとマラソンを合わせた競技みたいでした。私はTシャツを何回となく着替え、淡々と身体を動かしました。さしたる盛り上がりはない、が、鋭く、研ぎ澄まされた観察眼が要求される作業でした。
「うぃ~ん」と云う音の唸りがセミの声と拮抗し、比例して美しくなって行く夏のフローリング。おおよそ9割は終わったところでアマチュアならコレで良いだろう、と思いました。
しかし、世界でただ一人の夏の大掃除男になる為にはまだ必要なモノがありました。それは仕上げのワックスがけです。塗る、乾く、磨きをかける。大掃除の採点競技、ワックスがけ。体力以上に集中力が試されます。
ここで段取り作戦会議と称し、休憩したのが運のツキ。気持ちが切れてしまったのです。
大掃除の副産物はしばらく見ていなかった本、CD、DVD、写真。誘惑に負けました。「別にワックスかけてなくても適度に輝いてんじゃん」。
五輪の影響ももはやここまで。私の男子個人床運動はあえなく終わりを告げました。(POP)