第535号 デフレ脱却への日銀同意人事

2012年4月7日 (土) ─

 我が国の金融政策を決めるのは日本銀行です。日銀では月に2回金融政策決定会合を開き諸施策を話し合うのですが、この議決権を持っているのは、総裁と2名の副総裁、それから6名の政策委員会審議委員です。実はこの4月4日をもって、審議委員のうち2名が任期満了を迎えました。新たな委員の選出は国会の承認が必要な同意人事によって決まります。 

 私は、去る2月14日の日銀による1%のインフレ目標設定と、さらなる量的緩和に対して一定の評価をしています。その上でより一層のデフレ脱却政策を求める提言をその翌週に議員有志で取りまとめ、党と政府、そして日銀に申し入れました。中でも日銀審議委員の人事提案については特に強く求めました。 

 今日までの長期デフレによる経済の低迷は、言うまでもなく日銀総裁の責任です。とりわけ、ゼロ金利解除を推し進めてきた時期の副総裁である白川氏を総裁に推した当時の野党・民主党の責任は極めて重いものです。こうした失敗を繰り返さないためにも、このタイミングでの審議委員の人事は慎重におこない、最も適した人を選ばなければなりません。総裁・副総裁人事は来年ですが、市場に対して政府のデフレ脱却への強い決意を示すためにも今回の2名の審議委員人事は大切な機会です。だからこそ私達は人事案をリストとして提示してきたのでした。

◆驚きの人事案 
 しかし政府が3月23日に提示した人事案には驚きを隠せませんでした。1人は一部で事前報道されたため、提示が見送られましたが、もう1人の候補者はメディア等でも活躍をしている民間エコノミストでした。 

 このことは党の財務金融部門会議でも大きな議論となりました。そのエコノミストの今日までの言動がデフレ脱却とは正反対のものであるという件もさることながら、人事案の選定プロセスが不透明であるとの声も大きくあがりました。 

 私は、先の消費増税法案議論においても政府のデフレ脱却と経済成長へのより強固な意思表明が必要と主張してきました。候補のエコノミストに対する個人的想いは一切ありませんが、金融政策のかじ取りを間違ってはならない大事な時期の人事案であり、党内の議論の合意はきちんと経られるべきです。財金部門では、この人事に異を唱える声が大半であり、対応は党政調の判断に委ねました。 

 ところが最終的に国会で示された党の意思は「賛成」でした。これでは政権のデフレ脱却の意志が疑われかねません。特に、白川総裁は3月に米国で「バブル崩壊後の積極的な金融緩和政策はもちろん必要だが、副作用や限界についても意識する必要がある」と強調しています。これでは市場からデフレに逆戻りする政策への懸念を表明されても仕方がありません。

◆どんな人事が求められるか 
 このような状況下では、やはりデフレ脱却への意志を象徴するような人事こそが求められるのです。結局同意人事は参院で野党により否決され、それ受けてご自身も辞退をされたため、そのエコノミストの起用とはなりませんでしたが、政府と日銀のスタンスに今もって危うさを指摘する声があることを忘れてはなりませんし、経済成長につながる人事を引き続き求めていかなければならないとの思いを再確認しました。(了)

 

スタッフ日記「かしこまりました」 
 娘が就職し、1年過ぎました。 

 就職氷河期の言葉通り、厳しい就職活動で、「社会に必要とされていないのかな?」と涙を流した日もありましたが、へこたれずに受け続けた結果、秋口に内定を貰いました。 

 研修を終え、ひと月ほどたつとストレスで娘の髪が抜け始めました。元来のんびり屋の娘は仕事の手順を覚えるのに時間がかかり、周りのペースについてゆくのが大変だったようです。 

 それでも夏が過ぎ、秋を迎える頃には少しずつ余裕もでてきたようで、家で仕事の話をしたり、会社の人と食事に行ったりするようにもなりました。 

 会社に入って何が一番つらかったか聞くと、「言葉遣い」という返事が返ってきました。目上の人や電話、来客者への接し方に緊張して、敬語を話す事が出来ず、毎日のように先輩に怒られながらも教えてもらったそうです。 

 娘のメモの最初には「かしこまりました」と書いてありました。こんな言葉使うの?と聞くと、上司に返事する際には必ずそう返事をするのだそうです。 

 ある時、社長に「かしこまりました」と返事をすると、「君は本当にかしこまってるのか?」と尋ねられ、とっさに「はい!かしこまっております」と答えて周りの空気が張り詰めた、そんな事もあったそうです。 

 まだまだ失敗ばかりの毎日のようですが、諦めることなく指導して下さる会社の方には感謝の気持ちでいっぱいです。 

 社会人2年目。新入社員も入って先輩になった娘が少し逞しくなったように感じます。 (エバ)  

第535号 デフレ脱却への日銀同意人事