第534号 未明の決定に至る攻防
27日夕刻からの消費税増税法案審議は、日付を超えて28日午前2時半、前原政調会長へ議論を一任することを取り付けて幕を閉じました。8日間、およそ45時間に及ぶ党内審議では、非常に丁寧かつ真摯な議論が行われてきており、報道されているような「混乱」や「決められない政治」とは全く異なった状況でした。ただ、それだけにあと1、2時間の猶予は持てなかったかと思えてなりません。政調会長への議論一任は方法としては当然のプロセスですが、会議終了後の怒号飛び交う有様は残念で仕方がないものでした。
◆停止条項は明記されず
会議中、野田総理、岡田副総理、輿石幹事長、前原政調会長の四者が修文・提示した修正案では、さらなる増税は取り下げられました。また、焦点であった「経済状況の好転」を判断する「数値目標」として、名目3%、実質2%の数値が示され、少なくとも政府の成長に向けた「意思」は記されていました。
ただ、そこには停止条項は明記されず、「施行の停止を含め所要の措置を講ずる」と表現されるに留まりました。つまり、明確なデフレ脱却に結びつく経済好転の決意を示し、それが実現できなければ施行しない、という政府の意思表示には見えない可能性のある、リスクを含んだ法案ともいえるものでした。
8日間の議論は、弾力条項については数値目標の設定と同時にその達成の見込みも含めて総合的に勘案するという「円高・欧州危機等対応研究会」で取りまとめた案文が基本となり、展開されました。
◆モデル議論と政府の意思表示
経済状況の見通しそのものを論じるモデル議論も当初指摘されました。
焦点は、内閣府の経済見通しが民間の試算と比べて楽観的すぎる、という増税慎重派からの懸念でした。
そもそも政府の示す経済見通しは、政策を通じてこの数値を目指す、という意思の表れでもあります。一方、民間シンクタンクは政策の決定機関ではないため、過去の事例から参照し、「政府がこうするであろう」という予測を頭に描きつつ数値を試算します。つまり、この間に大きな隔たりがあるということは、民間が政府の政策を信用していない事と同義です。これは、ここ20年間、長期のデフレなど政府・日銀の金融政策が経済をサポートしてこなかった事の表れに他なりません。
政府と民間、いずれの試算を信じるかではなく、私達は政権与党として、政府の試算に込められた意思=新成長戦略を自らの責任において実現する覚悟が求められています。しかも、政府はその意思を閣議決定で明確に示しているからこそ、増税の大前提としてその数値をクリアしなければならないことは当然の帰結なのです。
こうした議論も踏まえ、私達は何とか「政府の意思」としてのデフレ脱却、経済成長を明示すべきと働きかけてきましたが、最終のトリガーとなる停止条項については受け入れられませんでした。
閣議決定に対する総理の強い意志は理解しますが、消費増税の前提となる好転をどう判断するか、という立法者の意思の表明こそ重要、との認識は立法府の一員として譲れません。
閣議決定までの法案審査は党としての決定ですが、引き続き訴えてゆく努力は怠りません。 (了)
スタッフ日記「議員会館でのお手伝い」
代議士とのお付き合いは、代議士が大阪本社の製造メーカーに、当時、上場会社における全国最年少の取締役に就任されたときからであり、以降、公私にわたり気にかけていただいていました。
このたび勤務先が東京になったことから、4月の勤務開始に先立って、少し早めに上京したところ、さっそく議員会館へのお誘いを受け、喜んで(?)お手伝いをさせていただいています。いつもは拝読するばかりであったスタッフ日記を自分が書くことに驚いており、つくづく代議士の人的魅力(いや人づかいの大胆さか)を感じるにはいられません。
新しくなった議員会館は、旧館時代と比べると、確かに広く、明るくなりましたが(窓からは官邸が間近です)、議員の幅広い活動を支えるために十分な物的基盤なのかというと、まだ少し物足りなさを感じました。特に、デジタルデータ化が進んでいるとはいえ、紙媒体の重要性もいぜんとして高く、それどころかストレージ容量やクラウドの進展にともなってデータ量が増え、それに比例して、紙資料がだんだんと分厚くなってきているのではと心配です。
政治活動は、目前に迫った課題の解決を求められることも多く、事態はつねに流動的ですが、いつでも最新の資料にアクセスできることの重要さと、当初からの議論の変遷を適切に跡付けていくことの難しさを感じました。 (ぽにょ)