第474号 米中の狭間で

2011年1月22日 (土) ─

◆「逆トップセールス」
 訪米した中国の胡錦濤国家主席が19日、オバマ米大統領と会談しました。今回印象に残ったのは、中国が米ボーイング社の航空機200機を購入する契約を結ぶなど、胡錦濤主席によるいわば「逆トップセールス」でした。今回の主席訪米でまとまった商談の総額は合計450億ドル、日本円で約3兆7000億円にも及びます。日本ではおよそ考えられないことですが、それができてしまう中国のすごさを見せつけられた感があります。米国内の経済、雇用問題にあえぐオバマ大統領にとっては極めて「おいしい」お土産だったといえるでしょう。オバマ大統領自身「23万5000人の米国人の雇用を支える。」と手放しで歓迎し、さらに「我々は中国に何でも売りたい。」とあからさまなトップセールスで応じました。中国の戦略の術中に完全にはまったかのようにも見えます。「商談」の効果もあってか、大統領からは中国の人権問題について強い主張はなされなかったようです。

 ノーベル平和賞を受けた大統領がノーベル平和賞受賞者を「国家政権転覆扇動罪」で有罪とし、懲役11年の実刑判決を受けて服役中としている国の元首を国賓待遇することとなりましたが、胡錦濤国家主席を歓迎する公式夕食会に招待されていた共和党のマコネル上院院内総務、ベイナー下院議長と民主党のリード上院院内総務がそれぞれ欠席しました。超党派による欠席は米議会において中国の人権や人民元問題に批判が根強いことを印象付け、訪米の成果に水を差すことになりました。

◆中国がGDP世界一!?
 一方、中国がGDP(国内総生産)で日本を抜き、世界第2位となることが確実となりました。さらに、内閣府の推計によると2025年には中国がGDPで米国をも追い抜き世界一に躍り出るとされます。経済における勢力図の変化は、外交における発言力や安全保障にも影響を及ぼします。事実、中国の経済力の高まりは軍事力増強に直結しています。中国の本年度の予算は昨年度の当初予算額と比較すると、約9.8%の伸びとなり、過去5年間で2倍以上、過去20年間で約18倍の規模にもなっています。また、中国の空母保有の動きも懸念材料です。キーティング米太平洋軍司令官が、2007年5月に訪中した際、中国海軍幹部から「われわれが空母を保有したら、ハワイ以東を米国が、ハワイ以西を中国が管理することで合意を図れないか」と打診されたとも報道されています。中国の台頭を示す一連の事象から判断すると、これは絵空ごととも思えません。

 いずれにせよ中国が今後の国際政治にとり最も影響力あるアクターとなることは間違いないと思われます。米中の狭間でどう立ち回るかが我が国の生き残りにとり重要な課題となりますが、外交の要諦は相手の急所を押さえ、その動きをコントロールすることにあります(例えば中国はレアメタルという急所を押さえています)。それができないのであれば、少なくとも急所を押さえられないことが肝要です。(了)

 

スタッフ日記「ごはんライス」

 ここのところ、朝日新聞東京本社のツイッターで「ゴハンのお供」が話題になっています。ふりかけなどの定番から、バターを乗せて鰹節としょうゆを掛ける、というちょっとした変わり種まで、皆さん思い思いのお気に入りがあるようです。自炊をしている、と有名な国会事務所では最近いくつかの「”ご当地”食べるラー油」を頂戴する機会があり、昼食時に食べ比べをしています。

 ところで、そんなあるお昼時に代議士が突然言いました。「ごはんライスって知ってるか?」もちろん誰も知りません。そもそも「ごはん」と「ライス」は同じものでは…?とみんなキツネにつままれたような顔になりました。聞いてみると、炒めたしょうゆ味のごはんを白飯(ライス)の上に乗せて食べる、という学生時代に代議士自身が開発したメニューなのだそうです。でも、どうせ最後には混ざるのだから、始めから全部をしょうゆ味にしてしまってはいけないのか?と私は思いました。思ったのでそのまま聞いてみました。すると「違うんだ、ごはんにかけることが大事なんだ」と。どうやらカレーライスなどと同じ感覚で、「より安くできるメニュー」という位置づけだったようです。

 「みんなウマイ、ウマイって食うんだけどさ、誰も真似しようとはしないんだよ」と遠い目をして代議士は言いました。「なぜその発想に至ったのかわからない」とも言われたとか。

 私もあまり真似をしようとは思いません(!)が、若かりし頃からユニークだった代議士の一端が垣間見えた出来事でした。(シズ)

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