秘書官人事

2011年1月22日 (土) ─

 秘書官人事も政治主導の最たるものであった。

 大臣秘書官は、大臣就任と同時に大臣官房がその履歴書とともに推薦をしてくる。国交省の場合は、旧建設系と旧運輸系の事務官を一名ずつ。

 僕は、大臣就任と同時に官房が準備していた秘書官の名前も聞かず履歴書も見ず、心から信頼していた副大臣時代の秘書官を大臣秘書官に据えると言い放った。

 官房は慌てふためいた。大臣秘書官と副大臣秘書官とは年次に差がある。当然、副大臣秘書官のほうがはるかに若い。官房にしてみれば、若い大臣秘書官誕生は役所の年功序列の秩序を乱すことになる。官房からは必死の説得が続いた。

 しかし、僕は一切構わずに秘書官人事を押し通した。そして、旧運輸系からもということに関しては、副大臣時代からその働きぶりを知る優秀な若い官僚を秘書官にを自ら指名した。

 秘書官の指名と政策審議室の設置による政策官の指名。この初動における二つの重要な人事こそが、政治主導の要諦だったと改めて思う。

 もちろん大臣自身が役所に対していわゆる「土地勘」がない場合、「これは」と思う人材が思い当たらなければ、役所の推薦人事を受けることはやぶさかではないと思う。実際、役所は極めて優秀な人材を示してくれる。僕も副大臣時代に出会った秘書官とはそれまで面識がなかったのだけれど、素晴らしい人材であり、だからこそ一年間苦楽を共にした副大臣秘書官を大臣秘書官に指名した。

 要は、大臣の意思で物事を判断していくことが最も重要であり、そのことそのものが、政治主導なのだ。

 幸い、僕は国交省ではスタッフに恵まれた。通称「中廊下(なかろうか)」と呼ばれる幹部の皆さんとも、意思疎通を密にして仕事をすることができた。

 今後、政治主導の議論については、僕なりの経験で語るべきものがあると思っている。

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