本日付け工程表見直しについて
原発収束のロードマップの見直しが発表された。
僕自身、関係者の一員として、ステップ1で一定の成果が上がったことは事実として、この四か月間、目標達成に向けて現場作業に従事した方々に心から敬意を表する。
具体的な成果とは、燃料プールの冷却に一定の前進が見られたこと、汚染水の一部処理が可能になったことなどである。
しかし、一方で依然として課題が積み残されているのも事実だ。
まず、循環注水冷却についての課題。
循環注水冷却と言っても、原子炉へ注水後に発生した汚染水を、そのまま信頼できる配管のみを経由して処理しているわけではない。どこから発生して、どういう経路を通ってきたのかわからない汚染水をタービン建屋から回収して処理し、再び原子炉に注水しているだけである。当然ながら、信頼性のある配管での循環注水冷却を目指す必要がある。
また、、肝心の原子炉の状況は、水素爆発直後から、注水を海水から真水に切り替えた以外は、ほとんど変わっていない。それどころか、原子炉内、格納容器内の状況は、水位、溶けた燃料が存在する場所すら明らかになっていない。巷間言われるように格納容器から燃料が溶け出していることも否定できない状況ですらある。
依然として原子炉内から溶け出した燃料や、燃料プールの燃料は、いわば直接自然界にさらされていることになり、経路は様々だが、放射性物質が継続して外部に流出している状況と言わざるを得ない。
加えて事故収束の長期化については、認めざるを得ないのではないか。ステップ2終了時でも、この状況は変わりがないほか、根本的かつ重要な対策は中期的課題として先送りされているのが現状である。
その中期的課題についても、3年程度でできることが列挙されているだけで、いつ課題そのものが解消されるのか、明らかにされていない。国民の不安解消に向け、いつまでに事故を収束させるのか、明らかにすべき時期にきているのではないか。
そして、かねがね発信してきたことなのだが、今後もプラント状況の改善がほとんど見込めないことは今回の工程表見直しの内容からも明らかである。
しかも事故収束には長期間を要する状況が明らかになった以上、プラント対策を重視するのではなく、環境汚染による国民への被害拡大を防止することを最優先課題と考えるべきである。特に、原子炉、格納容器など原子炉建屋内について、最悪の状況を想定した上で、地上、地下の両面から放射性物質の封じ込め策を早急に講じるべきである。
このため、中期的課題の中でも優先度の高いものは前倒ししてでも実施すべきで、今回、地下遮蔽壁の整備着手が前倒しされたことは前進だが、これでも遅すぎると言わざるを得ない。
スピード感を持った対策を講じるためには、もはや財務上も厳しい状況でかつ資金調達力が懸念される民間事業者の東電に任せきりにするのではなく、国民の安全、健康を確保することを目的として、国が資金援助、対策の優先順位決定も含めて積極的に前面に出て判断するべきである。
繰り返すが、今回の事故収束の反省を踏まえて、原子力行政全体について、これまでの「国策民営」から、「国責民営」に転換することが求められているのである。
四か月の工程表のローリング評価だけで、ことが収まっているわけでないのである。