デマンドレスポンス政策へ

2011年7月21日 (木) ─

 エネルギー政策を経済政策としてとらえるべきである。

 エネルギーは、国家の安全保障問題でもあるが、一方で重要な産業政策でもある。

 ここのところ、脱原発依存の場合の電力需給問題が取り上げられ、具体的に需給をどのようにコントロールしていくのか、経済への打撃をどうやって最小限に抑えるべきかという議論が中心だ。

 もちろん、需給コントロールは原発再稼働が現実のものとならない限り厳しい現実がある。埋蔵電力と称される自家発電の利用も検討の俎上に上げられてはいるが、実用的に十分融通できるかというとそうでもない。

 電気事業法106条4項に基づく届出のある1000kw以上の自家発電設備は約5400万kw。これらのうち電力会社にすでに卸供給や今夏の売電済みのもので約2200万kw。ざっと残り3200万kwが自家消費容量になるのだが、当然自家用なので空きがなければ売電に回すことはできない。また、中規模工場や事業場、業務用コジェネなどは売電用の逆潮設備がほとんど設置されていないために系統への送電が不能なものが大半だ。この部分でおそらく1割にも満たない数字になるのではないか。

 更に、非常用電源2300万kwは非常使用のための設備であるがために6時間稼働などが前提となっていたり、環境規制の例外設備であるがゆえに常時運転は現実的でない。もちろん、これも逆潮設備はほとんどない。

 こう考えると、埋蔵電力による新たな電力供給は非常に困難だ。だからこそ、節電という発想なのだが、重要なのはこの節電を「我慢する」行為とみなさないことだ。需要の管理を徹底するという発想に立つべきである。いわゆるデマンドレスポンスである。

 僕自身は、このデマンドレスポンスを経済政策へと反映させるべきであると思っている。需要側管理、DSM(デマンドサイドマネジメント)を産業政策へと昇華させるべきなのだ。

 例えば、最も重要な需要側管理には電力の貯留、すなわち蓄電池の設置がある。さらには、需要のリアルタイム把握による高度な系統運用を図るためのスマートメータの設置がある。蓄電池や、スマートメータの生産・開発への国の関与は経済政策としてのエネルギー政策になりうる。
 
 スマートメータというと、電気料金を図るメータのちょっと新しめのモノ程度のイメージになってしまうかもしれないが、そうではない。需要管理を図るための極めて重要なツールになり、ひいては供給構造を大きく変える起爆剤ともなりうる。

 3次補正で、一定規模のスマートメータの支給・設置や蓄電に対する買い取り扱いインセンティブなど節電を需要サイドに立って支援する仕組みを考えることにより、可能性は広がる。

 もちろん、「入口」の電力供給の再生可能エネルギーへのシフトも重要だが、それを待つだけではなくデマンドレスポンスによって需要側からも「出口」で対応する両面が必要である。

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