将来交通需要推計と事業評価の見直し

2011年1月25日 (火) ─

 この一年四か月を振り返り、政策的に丁寧にかつ時間をかけて取り組んできたものの一つに、「将来交通需要推計」と「事業評価」の見直しがある。

 野党時代、道路国会でまさに国土交通省に切り込んでいく急先鋒として予算委員会で取り上げたのがこの「将来交通需要推計」と「事業評価」であった。

 国交省ではいわゆる、技官、技術の世界であるため、ある意味ブラックボックス化し、国会で取り上げあられることなど全くと言っていいほどなかったテーマでもある。

 2007年11月、当時予算委員だった僕は次期通常国会に向けて「小泉政権の総決算」を行うべく、道路公団民営化検証を行っていた。

 その時に遭遇したのが「将来交通需要推計」なるものだった。道路公団の民営化の是非を問うべく、資料の山に埋もれながら悪戦苦闘のさなかに「道路センサス」という見慣れない単語に出くわした。

 すでに、耐震偽装問題で建築行政に関わった経験があるとはいえ、建築確認というシングルイシューでもあった。しかし、その時は、まさに道路問題に端を発する公共事業全般に関わる課題に直面したのである。この瞬間こそが、その後国交行政に深く関わることになった起点だったと言っても過言ではない。

 そして、極めて素朴に「人口減少社会にもかかわらず将来において交通量が増していく予測」に疑問を抱いたのでもあった。

 その後のことは、08年の道路国会において冬柴大臣を相手に「将来交通需要推計」の議論をテレビ入り予算委員会で行ったことでご存知の方もおられると思う。国交行政における、僕のこだわりの原点でもある。

 副大臣時代に、すぐにこの問題については取り組みを始めた。

 道路の将来交通需要推計がどのような考え方に基づくものなのかを調べ、そしてさらに空港や鉄道などのいわゆる運輸系の公共事業評価の根幹をなす交通需要推計が建設系(道路)のそれとは異なった考え方に基づいて行われていることの事実を把握した。

 ブラックボックスをこじ開けた瞬間でもある。

 すぐさま件の「訓令室」によって大臣官房に「交通需要推計室」を設置。検討を開始した。ここでの要諦も、旧建・旧運の縦割りを残さないために人事ポストを室長のみとした点。こうした目配りは、政治家自らが行わないと必ず骨抜きになっていく。

 需要推計については、旧建設省モデルと旧運輸省モデルの統合形が構築された。これは画期的なことであり、国土交通行政において歴史的な一歩であると言える。

 さらに、事業評価も徹底的な見直しを図った。サイクルの短縮化、事業そのものの是非も検証対象とする計画段階評価の創設、B/Cだけに頼らない公共事業の評価の在り方として政策目標評価型事業評価の導入など、道路国会で指摘した懸案を処理していった。

 最終の仕上げは、新たな需要推計に基づく新たな事業評価である。

 こうした一連の取り組みによって、透明性、客観性、公平性をもって公共事業が進められることを願っている。

将来交通需要推計と事業評価の見直し