努力の成果
小6の三女のバレエの発表会があった。3歳から始めているので、かれこれ9年にはなるだろうか。
真ん中(あたり?)で育ったせいか、極めてのんびりしている子でもあり、身体を使っての表現というのが得意なようには見受けなかった。
それでも、二人のお姉ちゃんにひきづられるようにして通い続けていた。やがて、姉の一人が、やめ、そして続いてすぐ上の姉もやめて一人になってしまった。元来、絵を描いたり詩を書いたりが好きで、どちらかというと、そうした静的な創作活動の方が向いてるようでもあった。
しかし、姉二人がやめた後も、やめなかった。
その後、何度か、バレエの発表会も見に行ったことがあるが、およそ「やる気」があるようには見えず、他の子たちについていけない状態だった。もう、続かないだろうと思っていた。「ちょっとォ、やる気ないならやめなさい!」と、母からも叱られていた。
そして、選挙や何やらで、実に三年ぶりの発表会。どうかなぁ、と思いながらも会場に向かう。
三女の出番は第一幕。登場した四人のバレリーナが誰だか最初はわからなかった。名前を呼ばれて、はっと舞台を見つめる。わが目を疑った。その舞いぶりに、驚く。
まだまだかもしれないが、かつてのおどおどした様子は一変し、堂々トゥーシューズを履いて、舞い、踊る。
こんなに、踊れるようになったのか!。
こつこつと、努力を積み重ねれば必ず到達できる段階を、成果
として神様は用意してくれている。努力すれば、必ず報われる。そして、努力の中にもっとも大事な、心の強さと他人に対する優しさを得ることができる。
遅れてやってきた、チビたちとヒロコに、「お父さん、行かなくちゃいけないけど、すっごく上手だったよ、って言ってあげてね。」と伝えて会場を出た。
夜遅く、三女は帰ってきた。母から私の言葉を聞いたのか、うれしそうに部屋に入ってきた。
いすに腰掛けている私のひざの上に、ニッコリしながら黙ってちょこんと後ろ向きに座った。後ろから、そっと抱きしめて娘の背中にささやいた。
「ありチャン、ホントに偉いね。がんばったね。お父さん、感動したよ。」。
コクリと、うなずく三女。
神様が用意してくれた成果の段階は、家族の心までも優しく暖かく包み込んでくれるものだった。