償還主義の廃止を!
前回に交通需要管理という理念に基づく高速道路無料化の最終形を大臣時代に用意していたことを明らかにしその姿を示した。そして、その財源確保のためにはそもそも破綻してしまっている償還主義を廃止し、高速道路会社の完全民営化こそ取るべき方策であると示したが、償還主義廃止と完全民営化について説明したい。
そもそも「償還主義」とは何か。
現在の償還主義の基本的な考え方は、民営化45年以内に、総収入と総費用がバランスすること、が前提となっている。
総収入とは「料金×交通量×料金徴収期間」であり、総費用とは「既存債務+新規債務(新線建設+修繕)+管理費」+利息である。(根拠法は、特措法23条3項「料金徴収の満了日は、~会社の成立の日から起算して45年を超えてはならない。」)
そのための仕組みとしては、
・各高速道路株式会社( 以下「高速会社」) と日本高速道路保有・債務返済機構(以下「機構」)は、協定に基づき、債務の返済を行うことになっており、高速会社は料金収入から管理費を差し引いた額を、貸付料として機構に支払う。
機構は高速道路資産を保有するとともに、貸付料で債務を返済。国は全ての債務が返済完了後、国へ高速道路資産を移管し、無料の高速道路として国が維持管理を実施することとなっている。
上記の仕組みは「料金は、貸付料と管理に要する費用を償う」(特措法23条)、「機構は45年以内に債務返済を完了」(機構法31条)、「機構は、高速道路資産及びそれに要した債務を会社より引き受ける」(機構法15条)、「会社と機構の協定の締結」(会社法6条、機構法13条)で法定されている。
また、料金収入は、全額返済に回しており、利潤を含まないため、高速道路事業には法人税がかかっていない。
さらに、料金徴収期間が定められていること、料金水準が建設費からみて適正な水準にあることから、「公共の用に供する道路」と見なされ、固定資産税は非課税となっている。
そして高速会社の株式は国が保有しているものの、利益を生まない会社なので配当は受け取っていない。
このような仕組みの現状を、償還主義の廃止による完全民営化することにより財源の確保を行って、先述の5割に及ぶ無料化可能区間の無料化を行うべきというのが大臣時代の僕の原案であった。
下記の比較を見ていただくとわかるとおり、現行制度では、国は、債務償還後に膨大な高速道路資産を得るにに比べ、完全民営化では、直ちにその財源を得ることが異なる。
【現行】
・債務償還期間内の法人税、固定資産税、配当金を免除する代わりに、債務償還後、無償で国は高速道路資産を手に入れる制度
・つまり、その時点で、国が有料道路を継続する判断を行い、料金水準を引き下げない場合、純資産+配当が膨大な会社であるため、株式売却益は膨大。
・ただし、その売却益は償還期間後に得ることとなる。
よって、
債務:一定期間内に償還(ゼロにする)
資産:債務償還後に、国が無償で取得
法人税(国):なし
固定資産税(自治体):なし
配当金(国):なし
株式の売却(国): 売却益なし(資産、収入を持たない会社であるため)
【完全民営化後】
・国が得ることができる財源は、法人税及び配当金もしくは株式売却益
・完全民営化すれば、その財源は直ちに確保可能
・料金収入を債務償還に回す(純資産を増加させる)か、株式の配当に回すのかは、経営判断であり、そのいずれの判断も株価を増加させる判断であるため、膨大な売却益を得ることが可能
・現行制度に比べて、国の収入減につながる可能性は、地方税である固定資産税であるが、減免措置を講じるほか、税収増に見合う地方交付税を減額することにより、国の財源を確保することが可能
・さらに、機構が不要となるため、管理費の削減が可能
よって、
債務:債務に見合った資産を保有していれば、償還する必要なし
資産:永久に高速会社が保有
法人税(国):あり
固定資産税(自治体):あり(減免措置の可能性)
配当金(売却しなければ国):あり
株式の売却(国):売却益あり(純資産、配当に見合った株価)
となる。
償還主義の廃止は僕が、現在国交部門で最も強く主張しているところでもあり、今後の党内の検討には深く関わっていくつもりだ。
交通需要管理こそ、本来の高速道路無料化政策の要であり、それを実現するための財源確保を、今後も永久に償還主義を貫いて料金徴収しようとする勢力と決別して、完全民営化によって行うべきだということを声高に訴えていく。