中国ガス田写真の公開

2015年7月22日 (水) ─

 「中国ガス田施設の写真公開へ…日中中間線で開発」と、午後、報道に上がった。
http://sp.yomiuri.co.jp/politics/20150722-OYT1T50132.html?from=ytop_top

 「政府は、中国がガス田開発を巡り東シナ海の日中中間線付近で建設を進めている海洋プラットホーム(海上施設)の状況を示す航空写真など証拠資料を公表する方針を固めた。22日午後にも菅官房長官が記者会見で発表する。海上施設が軍事利用されれば日本の安全保障に重大な影響を及ぼしかねないため、一方的な開発状況を国際社会に訴えることで中国をけん制する狙いがある。」

 そして、外務省のHPには、中国が建設した海洋プラットフォームの写真が14枚、そして地図が示されている。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000091314.pdf
http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000091318.pdf

 防衛白書2015における「海洋をめぐる動向」には「国際法秩序とは相容れない独自の主張に基づき、自国の権利を一方的に主張し、または 行動する事例が多く見られるようになっている」としている。もちろん政府側は、白書のこうした記述に基づく、国際社会へのアピールと共に、エビデンスの提示ということの説明はできるだろう。

 しかし、今回の写真公表については、詳しい背景を調べる必要があるが、考えられる問題点としては以下の二点が挙げられるかと思う。

 これまで公開してこなかったのは、政府が外交上、公開しないことがベストの選択肢と考えてきたということだ。そうであるならば、その外交上の犠牲(公開によるリスク)を払っても今回、公表に踏み切ったのはなぜか。

 仮に、安保法案をめぐる内閣支持率の低下を受けて、国民の危機感をあおり、安保法案についての国民の理解を得るために写真を公開したというのであれば、(政府が安全保障に資するとして提出した)安保法案成立のために、外交・安保上のリスクを冒すという本末転倒の話となる。

 これでは手段と目的が逆転し、政権内で、安保法案成立が、自己目的化していると言えないか。

 そしてさらに二点目は、今回の写真は、政府がこれまで公開してこなかった情報であり、政府の判断により、公表されたものである。

 実はこのことは、特定秘密保護法の問題とも密接に関係している。

 特定秘密保護法により、今回のような外交・安全保障に関わる情報は、政府が自らの都合により公開するか否かを判断することができる仕組みになっている。今回のように、時の政権が、自らの都合により断片的な情報を出し、世論に影響を与えようとする手法は極めて危険ではないか。

 来週にも始まるだろう参院審議での安保法制審議に向けて、官邸から世論を意識した発信が様々に繰り返されることは想像に難くない。

 中間線近傍の現実的な行動、そして将来的には軍事拠点化する可能性を国民に示し、安保法制審議に世論を動かすべく一定のバイアスをかける…。

 参院審議の前の戦いも、すでに始まっている。

中国ガス田写真の公開