ジレンマを打ち破れ
汚染水問題に端を発する「新たな国費の投入→救済スキームの見直し」については、僕が、先の閉中審査の経産委員会質疑で明らかにしたところである。
汚染水の流出を食い止めるための方策として政府が提示している凍土壁。技術的に問題ありだと思っているが、政府もそのことは認識しつつ、一般会計から予備費を活用して行うものとして9月10日に閣議決定した。
その時の前提条件は、「技術的難易度が高」いというものだ。
確かに凍土壁による遮水は前例がないため、技術的難易度は高い。しかし、不確かな方法であることは否めない。そのため、政府が置いた汚染水処理対策委員会の報告書でも凍土壁でダメなときは二年半前から僕が主張してきた粘土壁(ベントナイトスラリーウォール)で行うことも是としている(平成25年5月30日汚染水処理対策委員会「地下水流入抑制のための対策」p35の10行目)。
しかしだ。
粘土壁だと在来工法だ。技術的難易度が高いわけではない。国費の投入が困難なのだ。だから、財務省が示した支出の前提条件をクリアできない。経産省も、東電も立ちすくんでいる。かつてない、リスクの高い方法に固執せざるを得ないのだ。
また、東電は救済スキームにより生きながらえてはいるが、赤字続きである。さらなる費用のねん出は簡単ではない。
こうした状況で、財源の確保と新たなスキームが求められるというのが、先の閉中審査での僕の主張だった。「事業継続と事故処理のジレンマ」こそ、この汚染水問題の本質であることを言い続けてきたのである。
そして、もう一つ重要なこと。
それは、現行の東電救済スキームによる仕組みの問題ではないかと思っている。
東電を救済し賠償を進めさせるスキームは民主党政権時の「原子力損害賠償支援機構法」によるものだ。
当時、東電の法的整理の議論もあったが、電力債がすべての債権に優先することから賠償がないがしろにされかねないとして、法的整理の案は消えた。しかし、附則の6条2項と附帯決議によって今年の8月を目途として、「国民負担を最小化する観点から」再度、見直すことが規定されている。
つまり、救済スキームの見直しも含めて国費の投入の仕方を改めて考えなければならない時に来ている。民主党の「東京電力福島第一原子力発電所対策本部(原発本部)」では、ようやく議論が始まった。
僕は、上記の流れの中で、東電の事故処理と廃炉事業を切り出し、東電と国などからの費用負担による「廃炉機構」の設置と併せて、東電の「事故収束と企業継続のジレンマ」から脱却させるため、「株主責任と債権者責任の明確化」のための法的整理の案を提示した。
もちろん、法的整理ありき、ではない。
しかし、現状の会社組織を維持しながら事故処理と事業継続は困難であることは間違いない。そして、事故処理だけを切り離して現行の救済スキームを残すことに果たして国民の納得を得られるのか?「国民負担の最小化」を実現するスキームを考えるべきである。 議論の呼び水として、法的整理による所有権の分離を提案した。発電部門、小売部門の売却により送配電部門を東電継承会社とする案だが、もちろんあくまで議論を引き起こすためのものである。
党内には、「法的整理」の言葉が踊ることだけで混乱を招きかねないなどの意見もあるようだが、議論を否定してしまってはいけない。
かつて与党の時にどのように対応したか、で議論が縛られるものではない。むしろ、当時は状況判断として正しかったとしても、現時点においては違うとなれば、あらためて検討すべきだ。繰り返すが、今必要なことは事故処理のためにも、事業継続とのジレンマから、そのくびきから、東電を解き放つことだ。
そのための、新組織提案や国費の投入の在り方を検討していく。