もう一つの60日ルール

2015年7月17日 (金) ─

 安保法案強行採決で隠れてしまったが、もう一つの問題法案である派遣労働法が衆院通過後、参院での審議が進んでいない。

 所管する参院厚労委では年金情報漏洩問題などが起こり、度重なる答弁の修正などによって野党は反発を強め、審議できる状況にない、と与党を突き放している。政権も、安保法制が一番、と厚労委を強行に進めることには躊躇し、前に進んでいない状況だ。

 当然ながら、この派遣労働法についても60日ルールがある。6月19日に衆院通過で、参院に送付された後、8月18日までに議了しなければ60日ルールで衆院での再議決を待つことになる。派遣法の施行日は9月1日。それまでに再議決を行わなければ法案は失効してしまう。すなわち廃案だ。

 これから参院での安保法制審議を与党は強力に推し進めようとするだろうが、昨日の強行採決で、今後の内閣支持率の低下は免れないだろう。参院審議でも、「国民の理解を得られるよう丁寧に説明」をお題目のように唱えるのだろうが、こちらも時間的に丁寧に進める余裕がない状態。

 派遣法が8月19日からの8日間で採決を行わなければならない状況が現出するのは、頭が痛いはずだ。政権にとっては、8月末というのが、自ずと大きな山場になって行ってしまう。その間にも、広島、長崎の慰霊式典、70年談話などで、安保に対する風向きが厳しくなり、丁寧といいながらも一方で派遣法を強行せざるを得ないという、ちぐはぐな政権運営が露呈することになる。

 加えて、新国立競技場の見直しをすると総理が表明しても、今日までのずさんな処理を容認してきた政権への批判はそう簡単には収まりそうもない。

 やはり、そう考えると、8月末から9月にかけて、野党の準備が整わない状況での「解散」の、可能性が出てくるのである。一度犯してしまった暴挙・愚挙に、さらに重ねることなど、おそらくは気にしてはいないだろう。

 もう一つの60日ルール適用が、引き金になる可能性を、否定はできない。

もう一つの60日ルール