第825号 森友書き換え問題の本質

2018年3月10日 (土) ─

 財務省が、森友学園への国有地売却に関する決済文書の内容を書き換えていたのではないかという疑惑が持ち上がっています。

◆繰り返されるねつ造疑惑
 省庁の保有する文書に関しては、つい先日も、政府が労働改革の目玉と位置付けた裁量労働制の範囲拡大について、その根拠とされていた労働時間のデータに誤りが多数含まれていたことが発覚しました。そして、それは単純なミスではなく、政府に都合の良いように、故意にデータがねつ造されたのではないかとの疑惑の目が向けられています。

 今回の疑惑は、森友学園への国有地売却取引の経緯を記した決裁文書について、契約当時に作成された文書と、昨年の問題発覚後に財務省が国会議員らに示した文書の内容が異なっていたことから、「問題発覚後に書き換えられたのではないか」というものです。事実関係は未だ不明です。しかし、仮に疑惑が事実だとすると、森友学園問題での追及を避けるために、政府に都合の良いように文書がねつ造されていたと受け取られても仕方なく、野党のみならず、国民全体を欺く行為と言わざるを得ません。

◆国会による追及は当然
 財務省は、事実を明らかにするための野党による文書公開要求に対し、本件は籠池氏による詐欺などで刑事事件として捜査を受けている事案であり、「捜査機関の捜査に影響を与えるおそれがある」として、関連文書提出に消極的な姿勢を取っています。しかし、これは全く筋の通らない主張です。

 森友学園国有地売却問題は、単純な詐欺事件とは異なり、巨額の「公金」の不正値引きと、そこに政治の何らかの関与があったのではないかという疑惑であり、重大な国政事項です。国権の最高機関として、国会が主体となって疑惑の解明に努めるのはむしろ当然であり、財務省の、捜査に影響を与えるおそれがあるので国会による追及には協力できないという姿勢は、国会の役割、ひいては三権分立そのものを否定しかねないものです。

 この疑惑については、与党内においてさえ、財務省の姿勢へ疑問の声が広がっています。これは与野党間の政争の具ではなく、「国民の代表機関たる国会が、政府・政権に対してチェック機能が果たせるか」という問題です。国会が一致して、行政の不正疑惑を質(ただ)すために、憲法上規定された国政調査権を発動し、国会による真実の解明を行うべきです。

◆行政文書チェックの仕組みを
 そして、繰り返される文書ねつ造疑惑の背景にあるのが、省庁による文書管理と開示システムの不透明性です。

 各省庁は独占的に文書を管理し、例えば国会議員が省庁の資料をベースに国会質問を行おうにも、省庁に都合の悪いデータはなかなか提示されないといった問題がよく起こります。少なくとも、行政へのチェック機能を担う国会議員が、政策の合理性を基礎づける詳細な資料や、省庁内における文書の作成・保管・廃棄のプロセスの情報に原則アクセスできる仕組みの構築が必要と考えます。省庁の文書ねつ造疑惑は、長年の我が国行政の課題であり、それ故、行政の透明性確保と国民・国会によるチェックという、民主主義の根本に関わる根本的な課題です。小手先の対処で終わることを繰り返してはならず、本質に切り込む努力を立法府は尽くすべきです。(了)

 

森ちゃん日記「新たな一歩」
 3月、自分自身や周りの環境などさまざまな場面で新しいスタートに出会う機会も多くなります。事務所へ手伝いに駆けつけた、4月から新社会人となる学生インターンとも、その真っ直ぐで力強い眼差しから踏み出す第一歩を、心から応援したいと思う場面がありました。

 先日、1月の奈良県における有効求人倍率が1.40倍となったことが発表され、前の月から0.06ポイント上昇し、平成の最高値を更新したというニュースを目にしました。特に奈良県は、従来から県外就業率が全国一高いことが指摘されてきましたが、現在は埼玉県に次ぐ第2位となり、今年1月の実際の就業地が奈良県となっている就業地別有効求人倍率も、これまでの最高値を更新し、微増ではありますが、奈良県内で働く世代が幅広く魅力ある街へと一歩ずつ歩んでいる気がしています。

 その主な要因として、奈良県内の新規求人をみてみると、観光事業を中心とした宿泊業や飲食サービス業で大きな伸びがみられたほか、特に医療・福祉の分野が3割を占め、5月1日より新たに開院される新県立奈良病院を中心とした奈良モデルの医療・福祉が積極的に進められていることがうかがえます。しかし、全国的な流れを見ると、デイサービスなどの介護事業所の乱立により介護保険法が施行されて以降、昨年は医療福祉施設の倒産件数が過去最多となるなど、需要を鑑みない地域での介護施設の建設が問題となっています。離職率も高いことからも、住民密着型を目指す地方自治体との連携や、地域に根差した医療・福祉従事者の人手不足が深刻な問題となっています。奈良で活躍していく若年世代が、希望を持ち続け、働くことに価値を見出せる環境づくりを進めていけるかが、今後の魅力ある奈良モデルのあるべき姿だと感じています。

 東日本大震災から7年、私が就職活動真っ只中だった7年前は、企業も新規採用を絞り、希望にそぐはない形で、第一歩を踏み出した仲間もいました。そんな、予想もできないあらゆる思いが胸を交錯する中で何かを始めることからスタートしようと決意した友人を思いながら、私も新たな一歩を踏み出したいと思っています。

第825号 森友書き換え問題の本質