第815号 年末の野党政局
年末を迎え、年明けの通常国会、そして再来年の統一地方選挙と参院選を見据えて、野党間の水面下の駆け引きが始まっています。
◆野党間の駆け引き
当たり前のことですが、バラバラの野党では、政権交代など起き得ません。その当たり前のことができずに、先の総選挙の結果、民進党が無所属会派も含めて四分裂してしまいました。そして特別国会でも、政府・与党が次々増税を打ち出すなど追及の余地が十分あったにもかかわらず、野党がまとまれずに政府・与党を追い込むこともできずじまいでした。こうした中、旧民進党系としてはいち早く、立憲民主党が、再来年夏の参院選に先立っての春の統一地方選に向けて、年内の県連組織立ち上げ・地方議員の囲い込みに向けた動きを見せています。一方、希望の党と民進党の間では、国会における統一会派を模索する動きも出てきています。
◆「感情」と切り離せぬ政治
しかしながら、こうした大きな塊としての野党を作る動きは一筋縄ではいかない事情もあります。民進党が希望の党に合流する決定を行った9月28日の両院議員総会以来、それぞれの党に分かれた議員には複雑な感情が入り交じっているからです。
政治とは「人が介在し、人と人とが擦れ合う世界」であり、そこでは当たり前のように、人の「感情」が政治・政局の動きを支配しています。これを、政治は「大局に立って行うべき」と客観的に言うのは確かに正論ではありますが、政治の現場において、それで全てが解決すると考えるのは現実的ではありません。私は14年間、永田町にいて、まさに、この「感情の擦れ、ぶつかり合い」こそ、「残念ながら」政治の本質なのだと実感しています。従って、希望の党と民進党の連携・合流も簡単ではなく、両党の個々の立場の方々の発言を聞くに、今後、相当の困難を伴うことが予想されます。
◆それでも野党連携が必要
しかし、私はそれでも最後は大局に立つ以外になく、野党の連携は避けては通れないと考えています。少数野党が個々に自らの党益のみに固執し、単に政権・与党に対する反対勢力としてのみ存在意義を見出すのなら、政権交代による緊張感によって支えられる真の民主主義は機能しません。
現政権に代わって政権を担いうる現実的な政策と政党を有権者に提示してこそ、民主主義と政党政治は成り立つと考えます。確かに「感情」が支配する永田町の渦の中では、野党連携は「まだまだ時期尚早」という状況です。しかし政治の世界では、それをわかりながらも、もがき苦しみながら前に進めようとするプロセスが必要と考えます。
希望の党では、「環境が整った者からの公認」が発表されたようです。しかし、これをもって、立憲民主党との覇権争いが始まったとみるのは早計で、むしろ現時点では容易ではない、分裂してしまった野党の、再結集の第一歩が始まったとみるべきです。道は険しく、先は混沌としています。しかし、それでもなお、訳知り顔に、「まだ日が高い」という前に、野党をまとめるための汗かきを、現場の議員の皆に、今、取り組んでもらいたいと強く願います。
どんなに混沌としていようとも、先に進まなければ道は拓けません。私も、自らの立場で今できることを模索し、取り組んでいきたいと考えます。(了)
森ちゃん日記「暮らし方」
ここ数年で、高齢者が介護を必要とする状態になっても地域で暮らせるように、奈良市内でも地域包括支援ケアセンターを中心として、地域資源の開発と活用を図りながら様々な取り組みが行われています。
先日、お伺いした奈良市社会福祉協議会の西部地域の拠点でもある鳥見地区の鳥見デイサービス「ふらっと」では、閉園となった幼稚園を改装して、毎月地域の皆さん50人ほどが集まってランチを共にする「もりもりキッチン」や地元大学生が主体となったゲーム企画、視覚障害者の有資格者による健康マッサージなど様々な催しがあり、地域の楽しみが創造される空間としてあたたかい時間を過ごすことができました。
政府によると、3年に一度実施される介護報酬と障害福祉サービス等報酬の改定で、来年度から6年ぶりの引き上げが決まり、介護や福祉に携わる職員の待遇改善に繋がるとされています。
奈良県内でも、介護現場の声として就労環境の改善に挙げられるのは、給与や休暇などの待遇面での改善が60.3%と最も多く、県内の介護サービス事業でも約6割の事業所で職員が不足しているという現実があります。県内の高齢者単身世帯が6万人を超える中、ますます地域が担う役割が重要となり、支援が必要な高齢者を地域で支える地域づくり、まちづくりの推進が急務となっています。
大阪や京都へ若者が流出することも人手不足の大きな要因の一つですが、一方で、奈良県内の障害者雇用の民間企業における実雇用率は2年連続で全国1位となり、産業別に上位からみれば、生活関連サービス業、娯楽業が7.28%で医療、福祉が3.5%、サービス業が3.17%となっており、福祉の分野で活躍する方が全国に先駆けて増えています。
社会福祉や地域福祉という言葉が特別な人のための特別なものではなく、すべての住民にとって暮らしの中にあるものとして捉える社会づくりが重要です。子供からお年寄りまでが自らできることから行動していこうと考える街づくりを、奈良県が先頭に立って促進していくことを期待しています。
今年最後に、私が勇気づけられた近畿大学のパラリンピック競泳の一ノ瀬メイ選手の言葉を紹介します。「社会を構成する私たち自身が障害者を作り出す張本人なのかもしれない。社会が障害を作り出すなら、その社会が障害者をなくすこともできるはず」多種多様な人が暮らす中で、その社会が構成する慣習や制度、文化、情報などがともに生きることを拒否しない社会であることを目指す社会モデルの発想を今一度心にとめて「暮らし方」を考えたいです。