第805号 真の「政界再編」とは
民進党は前原新体制がスタートしました。しかしその一方で、今後、複数の離党者が出るのはないかとの報道があります。
「離党」と「政界再編」。関連して議論されることが多いこれらのテーマですが、今回は、私の政界再編に対する考えを改めて述べたいと思います。
◆野党の離合集散では不十分
議員が離党する際、理由とされることが多い政界再編ですが、私はこうした考えには疑問を持っています。
「選挙目当て」にそのつど目新しい政党に移籍する離合集散を繰り返しても、それは野党内での組み替えに過ぎません。
したがって、野党の分裂による新党の乱立が政界再編、政権交代へと発展するというシナリオは描きづらいというのが現実です。
真の政界再編を目指すならば、与党との間で明確な対立軸を掲げ、その旗の下に、今、与党にいる議員も含めた対抗勢力が結集しなければなりません。過去の歴史を見ても、1993年の政界再編は、先日亡くなった羽田孜元首相、小沢一郎氏ら自民党羽田派の造反がきっかけとなりました。
当時、自民党を分裂に追い込んだからこそ、日本新党など7つの党が連立する非自民の細川政権が成立し、その後の民主党誕生への布石となりました。
◆1つの争点は、「憲法」
対立軸の1つとして考えられるのは、憲法の問題です。 5月に安倍総理が9条改憲私案を発表しましたが、9月下旬からの臨時国会で、この試案についての改正条文案が自民党から示される可能性があると言われています。
安倍私案では、現行の憲法9条に自衛隊の存在規定を付け加えるとしていますが、12日に開かれた自民党の憲法改正推進本部の会合では、これに対し別案も含め様々な意見が出され、必ずしもすべての議員が賛成しているとは言えない状況です。
また、安保法制や共謀罪法成立の時のような、安倍総理による立憲主義を無視した強硬的な政権運営に疑問を感じている与党議員も一定数存在しています。
先ほど例に出した1993年の政権交代のように、真の政界再編のためには、与党内で政権に疑問を持つ議員を取り込む必要があります。
つまり、今後重要になってくるのは、憲法改正に慎重な自民党穏健派と組んで与党を分断するといった大きな絵を描き切れるか、ということです。
◆核になるのは民進党
旧民主党時代から変わり映えのしない民進党が政界再編を仕掛けられるのか、という厳しい声があることも承知しています。
しかし、政界再編には莫大な政治的エネルギーと経験が必要になります。その核を担いうるのは、政権を担った経験と人材、組織を擁する民進党をおいて他にないと私は信じています。
前原新代表のもと、徹底した「生活者視点」に立ち、「森友・加計」問題など、不信感をそのままにした安倍政権・自民党に真っ向から対峙し、国民の声を受け止める政党となるべく、党改革と政治勢力の結集に向けて努力して参ります。(了)
スタッフ日記「夏の一冊」
私はこの夏、東野圭吾さんの作品をたくさん読み返しました。中学生頃から地道に彼の作品を読んでいましたが、毎年夏になると読み返したくなるストーリーがあります。数年前に映画化もされた「真夏の方程式」です。
主人公は、天才物理学者の湯川准教授と、彼に事あるごとに刑事事件の相談を持ち掛けてくる岸谷刑事の2人です。
湯川准教授は科学者として興味を惹かれる事件だけ警察に協力をし、持ち前の冷静さと洞察力で解決の糸口を見つけます。対して岸谷刑事は、入庁2年目にして警部補にまで上り詰めたエリートで、上司にも感情で物を言ってしまうタイプです。
性格が真逆のこのコンビが、お互いの力を借りながら事件を解決するストーリーです。
物語は、湯川准教授が休暇中に泊まっていた旅館の近くで偶然殺人事件が起きたことから一気に進んでいきます。
ラストは、他の作家さんによくある「犯人が捕まって事件解決、みんな元通り!」というものではありません。例に見ないバッドエンドです。
子の犯した罪を親が身代わりとなって自首をするものの、結局子が罪を認めてエンディングを迎えるのです。
親が身代わりとなることの良し悪しは別として、どの時代でも親が子を守る姿は強くてけなげだと感じ、切なくなりました。
トリックも巧妙で、小さな仕掛けが殺人につながっており、読者ながらその場にいるような臨場感を味わうことができます。
残り少ない夏のお供に、この作品をお勧めします。(ヘビーヤード)