第775号 日米関係の深化とは
10日からトランプ大統領就任後初の日米首脳会談が行われています。新政権が次々と旧政権の政策を転換し、諸外国に厳しい態度を取るなか、日本がどのように対応するのかが問われています。
◆「理想の挫折」
オバマ前大統領は、国民皆保険を目指した医療保険改革などで格差の縮小を図り、メキシコ等からの移民には寛容な政策をとってきました。
外交では核兵器の力に頼る覇権主義からの脱却を目指し、アメリカの「あるべき理想」を追求しました。
しかし、その理想の多くは結実せず、残されたのは厳しい「現実」でした。
国内ではグローバル企業が巨万の富を独占する一方で、中間層が没落し、経済格差が拡大しました。その結果、不満のはけ口は増加する移民に向けられて、排外主義的な動きが広がりました。
外交的には、シリア内戦に対して有効な対策を打てなかったことからイスラム国の台頭を招き、テロの脅威が世界中に広がりました。
「理想」と「現実」のギャップが生じる中、特に格差に対する不満を抱えた国民の声の受け皿として誕生したのが、保護と分断による「アメリカ第一主義」を掲げるトランプ大統領です。
◆アメリカ第一主義への疑問
しかし、行き過ぎた「アメリカ第一主義」は、長い目で見ればアメリカ自身にもよい影響を及ぼさないと考えられます。
アメリカは多様性を持った移民の活力により繁栄してきた国です。
そのアメリカで移民を遮断するための「壁」を国境に建設したり、人種や宗教に基づいた入国拒否を行えば、人々の自由な活動を制限し、社会の活力を奪うことに繋がります。
また、国際的なルールを無視した高率の国境税などの保護主義の導入は、世界経済を混乱させ、更なる経済格差とテロリズムの拡大を招きかねません。
◆「物を言える」信頼関係
過激な政策に対して異を唱えることは、我が国の国益上も重要です。
トランプ大統領は、自身の勝利の原動力となった製造業労働者に配慮し、主に自動車産業を見すえ、日本との貿易は不公平だと主張しています。
しかし現在、アメリカが日本車の輸入に2.5%の関税を課しているのに対し、日本はアメリカ車に関税を課していません。
しかも、日本の自動車メーカーは、アメリカに工場を建設して労働者を雇用するなど、地域経済にも貢献しており、不公平との主張は全くの的外れです。
また、トランプ大統領は、日本のデフレ対策の金融政策を円安誘導の為替操作だとして、為替操作国と認定しかねない動きも見せています。
為替操作国と認定されれば、制裁措置を受ける可能性があるため、この動きを見逃すことはできません。早急に日本は市場介入も為替操作も行っていないことを主張しなければなりません。
日米関係の深化とはお互いの主張や考えを、たとえ互いの考え方にへだたりがある場合でも胸襟を開いて話をできる、そうした信頼関係の上で成り立つものです。
アメリカとは価値観を共有する間柄であり、盟友国であるからこそ、安倍政権には友好関係の中にも「言うべきことを言う」毅然とした対応を求めたいと考えます。(了)
スタッフ日記「似た者同士」
昨年の初夏、今話した事の記憶すら怪しくなってきた父がヘルニアの手術で入院する事になりました。
手術をしてから数日後の朝、ティッシュペーパーが切れたから持ってきてほしいと携帯に電話がありました。
仕事が終わったら行く、と答えているにもかかわらず、何度も「まだこれへんのか」と催促の電話がかかってきます。その度に「今は行けん」というと父は不満そうに電話を切るのでした。
夜、いつもより早く仕事を終え、父の好物と一緒にティッシュを持って病室に行くと、父は「他の人からティッシュをもらわなければならなかった」といい、見るからに険しい表情をしていました。
「そんなこと言うてもこっちにも都合があるんや」そう思ってむっとしていると父が「お前、書くものもってるか」と聞いてきました。
手元のボールペンを渡すとベッドの上で新聞の端に何やら書き込み、それをちぎって渡してきました。皺だらけの紙切れを掌の上で開いてみるとそこには「一手の遅れは千手の遅れ」という文字が!
「ティッシュぐらいでそんな偉そうに!」と私もさすがにカチンときて口早に別れを告げて病院を後にしました。
でも自転車での月夜の帰り道、私は子供の頃からマイペースでいつも時間に遅れ、入学式などの大切な時にすら遅刻してた自分を思い出していました。そう思うといくつになっても親に説教されている自分に思わず笑ってしまいました。
でもさすが親子、父もびっくりするくらいマイペースで時間にルーズなんですが!(チュウ)