第748号 凍土壁ギブアップ宣言
19日、東京電力は、原子力規制委員会の会合で、福島第一原発建屋内への地下水流入を止めるための「凍土遮水壁」について、完全に凍らせることは難しい、との見解を示しました。
◆失敗に終わった凍土壁
凍土遮水壁とは、地中に凍結管を打ち込んで地下に氷の壁を作り、溶け落ちた核燃料のある原子炉建屋への地下水の流入を遮断して、放射性汚染水の増加を止めようとするものです。
凍結開始前、東電は最終段階を「完全閉合」とし、原子炉建屋の周囲を凍土遮水壁で完全にブロックして地下水流入を止める計画を立てていました。
しかし、今年3月末の凍結開始から1カ月半以上経過しても土壌は凍りきらず、セメントを流し込むなどして凍らない部分をふさぐ追加工事を行っていました。
こうした泥縄状態の中、規制委員会から凍土遮水壁について問われた東電は、「100%凍らせる、100%水が通らない状況を作れるかというと、技術的にそんなことを考えているわけではなくて、我々は凍土壁を作ることで流入量の抑制を目的にしています」、「完全に閉合することは考えていない」と唐突に説明しはじめました。
これは従来の方針を転換するとも取れる内容で、福島県や地元市町村からも反発の声が出ています。
また、凍土壁の遮水効果そのものにも疑問符がついています。
東電の発表では、汚染された地下水のくみ上げ量は凍結開始後に多少減ってはいるものの、依然として多いということで、凍土壁が遮水に十分な効果を上げているとは言い難い状態です。また、原子力規制委員会の検討会も、東電に高濃度汚染水処理のタンク保管などの別の対策の検討を要請しており、もはや凍土壁の効果を信用していないと言えます。
◆在来工法への転換を
凍土工法というのは、トンネル工事で、土の崩落を防ぐ際などに用いる工法で、止水を主な目的とはしていません。
元土木技術者であり、そして原発事故直後から総理補佐官として事故対応にあたってきた私は、そのような工法で地下水の汚染対策を行う計画に疑問を持たざるを得ませんでした。それゆえ、計画が提起された3年前から質疑を通じ、本当に大丈夫なのかと繰り返し政府に問いただしてきました。
結果として、私の指摘通り凍土壁構想が失敗に終わりつつあるのが現状です。
凍土壁工事には、すでに350億円もの費用が費やされています。しかも今後の維持費について、凍結用の電気代だけで年間20億円が必要との試算もあります。汚染水問題は依然として緊急の国家的課題です。費用対効果が小さく、実効性の乏しい対策は即座に方針転換を図るべきです。
一連の責任は、東電だけのものではありません。実施に踏み切った当時の経産大臣にも、所管行政責任者として相当に重い責任があると言えます。
今後は速やかに責任の所在を明らかにし、私が従来から提案してきた粘土式遮水壁など、実績のある在来工法に切り替えるしか道はないと考えます。(了)
スタッフ日記「日本の履物の最高傑作」
走るのに地下足袋がよい、という話をどこで聞いたのかは覚えていません。
でも、足にフィットする、とか、親指が分かれているから踏ん張りがきく、という機能的な話だけではなく、日本マラソン界の父で、箱根駅伝を作った金栗四三さんが1911年に当時の記録を27分も上回る世界記録を出した時も地下足袋だった、という話まで聞かされると、私の興味はいや増しに増すばかりでした。
試すのは参院選。これまでは選挙でビラ配りなど行うと、靴が合わず、指の間のマメや、つま先や土踏まずの不快感などに悩まされるのが常でした。それが解消されるならこんなに嬉しいことはありません。
しかし、職人さんたちの履く、いわゆる「普通の地下足袋」をTシャツ綿パンで履くのはあまりバランスが良いとは言えず、抵抗がありました。そこで、南青山まで行って、普段使いもできるような「おしゃれ地下足袋」を買いました。
1時間以上かけて選んだ足袋の箱には大きく「日本の履物の最高傑作」と書かれていました。これは期待できます。
履いてみると、なるほどその名に違わず履き心地は軽く、コツさえつかめば驚くほど楽に速く走れました。高校の全校マラソンでビリだった私がこの結果ですから、金栗さんの27分も納得です。また、行く先々で「それ、足袋なの?」と声を掛けられ、よいコミュニケーションツールにもなりました。
選挙が終わって私の足袋はずいぶんくたびれてしまいましたが、この履き心地は手放せません。コハゼで留めるタイプなら砂利や石が入りにくいので、秋の運動会シーズンにもおススメです!(シズ)