第738号 問題先送りの選挙改革
28日、衆院選の一票の格差是正と、定数削減を行うための選挙制度改革関連法案が衆議院で、与党等の賛成多数で可決しました。一方、早期の格差是正を目指した民進党の対案は否決されました。
◆改正めぐる混乱
選挙制度改革をめぐる混乱の経過は以下の通りです。
今年1月14日に、衆院議長の諮問機関が、小選挙区で7増13減、比例で4議席減の総定数10削減を答申しました。
しかし、自民党は、定数減の対象となる人口減少県選挙区とする議員を中心に、この案に対する猛反発が起こったため、一旦、定数減ではなく選挙区割の変更で対応し、定数削減は次の大規模国勢調査が行われる2020年以降に先送りするという方針を示しました。
一方、安倍総理は、2012年、野党時代の党首討論で当時の野田総理と、衆院解散と引き換えに定数削減に合意しました。そのため、今年2月の予算委員会での野田前総理の質疑直前になって急に、定数削減を行うとの考えを明らかにしました。
それを受けて出されたのが、答申と自民党の意見の折衷案とも言える小選挙区0増6減案で、これが今回可決した法案の土台となっています。
ただ、この案は、都市部での増加と地方での減少という人口の動きに対応した抜本的な改革とはいえない中途半端なものです。
総理は2020年の国勢調査をもとに、現行方式よりも人口比を正確に反映できるとして答申が示した「アダムズ方式」に従った改革を進めるとしていますが、その頃には総理が交代し、約束は空手形になる可能性があります。これでは、単に責任放棄の改革先送りに過ぎません。
◆早期是正を目指す民進案
諮問機関の答申は、民進党が従来主張してきた小選挙区での5増18減と比べると物足りないものですが、早急に一票の格差を是正するために、まずはこれに従い、削減を行うべきです。
民進党が今国会に提出した改正案では、答申を反映し、「アダムズ方式」を2010年の国勢調査結果をもとに直ちに採用し、小選挙区で7増13減を行うこととし、問題先送りの与党案よりも抜本的な改革案となっています。
なお、定数が減少する県に奈良県が含まれる点について、意見を求められることがありますが、私は個々の議員の利害によって選挙制度を議論すべきではないと考えます。
◆人口減少社会への対応を
平成27年の国勢調査速報では、39の道府県で人口が減少するなど、我が国が人口減少社会に入ったことが改めて示されています。奈良県の人口も2010年から15年にかけて3万人以上減少しており、今後さらなる減少が見込まれます。
政治は、単に選挙制度の改革だけではなく、その背景となっている地方での人口減少にも全力で取り組まなければなりません。
一括交付金の復活による地方への更なる財源移譲や、道州制の段階的導入など、地方の自立性を高めることで活性化を図る政策も、選挙制度改革とともに強く訴えていきます。(了)
スタッフ日記「光の画家」
誰もが一度は目にしたことのあるお馴染みの画家、モネの展覧会へ行ってきました。細かい優しい色合いで日本では人気が高いらしく平日の美術館でも列ができる程賑わっていました。
普段めったに美術館などに足を運ばないのですが、春の優しい陽気のせいか、たまたま来日しているモネが観たくなりました。柔らかでキラキラ光り溢れる風景画からは爽やかな風も吹き抜けているようでした。
印象派というのは美術の授業で一度は聞いたことのある言葉ですが、その由来はまだ無名だった32歳の時の作品「印象、日の出」からきているそうです。旅先のホテルから太陽が昇りきる前のわずかな時間で描いた軽いタッチが描きかけの壁紙のようにお粗末であるとして、第三者よりその名がつけられたそうです。
数年前、絵からその時の年月日を調査したというニュースがありました。結果絵画の歴史を大きく変えた印象派の出発点は「1872年11月13日午前7時35分」とわかりました。
夜明けの冷たい港に昇る一点朱色の朝日が一番に目をひき、改めて今観るとより一層希望に満ちた生命の尊さを感じます。代表作「睡蓮」も日本と深い関わりがあるそうで興味深く、親近感が湧きます。携帯や音を遮断した空間で過ごせるのを贅沢だと思う現代ですが、たまにはゆったり古い物に触れるのもいいなと思いました。(葉っぱちゃん)