第684号 穴だらけの安保法制

2015年4月25日 (土) ─

 政府が昨年7月、集団的自衛権の行使を可能とする閣議決定を行ったことに対応し、自民、公明両党は3月20日、安全保障法整備の具体的方向性について実質合意しました。5月には国会に関連法案が提出される予定で、安保法制整備をめぐる動きは山場を迎えています。

◆拡がる武力行使可能事態
 我が国の自衛権について、政府は従来、我が国に対する武力攻撃が発生した場合には必要最小限度の実力を行使することは可能という見解を取ってきました。ところが、今回の案では、我が国への攻撃のみならず、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」には、国の「存立危機事態」として、必要最小限度の実力を行使することが可能であるとしています。

 また、米軍以外の外国軍隊に対しても支援が可能となる改正も予定されています。これが成立すると、自衛隊が米軍を含む外国軍隊に対し、補給や輸送などの支援を行えるようになります。つまり、これらの改正は自衛隊の海外での活動範囲・内容を大きく拡大し、戦後日本が守ってきた平和主義を大きく転換させうるものなのです。

◆山積する課題
 この決定については内容・手続きの両面において問題点が山積しています。

 内容面の最大の問題点は、派遣についての歯止めが不十分なことです。何が国の「存立危機事態」にあたるか、という点があいまいなため、政府の認定次第では際限なしに派遣が行われかねません。

 安倍総理は存立危機事態の例として、中東のホルムズ海峡に機雷が撒かれた場合を挙げていますが、なぜそれが国家の存立危機事態にあたるかについての説得的な説明はなされていません。このように要件があいまいなまま派遣が繰り返される恐れがあるのです。

 手続き面では、国民に立法の目的や意義、リスクを十分に説明しないまま、与党の限られたメンバーだけで拙速に決定してしまったという問題があります。安保法制の整備についてよく分からないという国民が多いのは、明らかに政府与党の説明不足が原因です。

◆国会論戦で戦う
 政府が我が国の領土や領海、国民の生命財産を守り、国際平和に貢献するために必要な措置を取るのは当然です。現実主義の外交安保政策として自衛隊の活動範囲の拡大というオプションがあり得ることは必ずしも否定しません。
 しかし、それも平和主義を基本理念とする憲法の下、十分な国民的議論と合意を経て行われるべきものです。リスクを踏まえてもなお自衛隊の活動範囲を拡げるべきであるという現実的で具体的な理由がそこにあるのかを、証拠を示しながら厳密に検討していく必要があるのです。
 国益に重大な影響を及ぼす安保法制の方針を、国民や国会の議論を経ることなく、政府・与党内の合意のみで決定すべきではありません。安倍政権に対しては国会における徹底的な議論を求めていきます。(了)

 

スタッフ日記「平成日本のよふけ」
 みなさんにはこれまでの人生で影響を受けたテレビ番組、ラジオ放送、小説、マンガ等はありますか?

 私にとっては「平成日本のよふけ」がまさにそうでした。1999年から2003年にかけてフジテレビ系列で放映された番組で、笑福亭鶴瓶師匠とSMAP香取慎吾などの司会者が各界から「とんでもない人」をゲストに迎えてトークを繰り広げていました。

 ゲストの顔ぶれは落語家、小説家、ミュージシャン、政治家、宗教関係者、ビジネスマン、プロ雀士、学者、天皇の料理番、医師、野球監督…と多岐にわたり、当時高校生だった私は深夜1時頃の放送だったにも関わらず、毎週楽しみに放送を見ていました。

 たくさんの人間として素晴らしい、つまり「カッコイイ」大人が出演するなか、一番印象に残っているのが後藤田正晴元副総理と瀬島龍三元伊藤忠商事会長でした。

 当時は18歳の高校生、今考えるとしっっぶいなぁと苦笑いしそうになりますが、激動の昭和を日本の中枢から見てきたお二人が語る言葉は非常に重く、考えさせられることが多かったように思います。

 今だからこそ言える裏話、危機迫るその時下した決断のこと、未来への提言など、ワクワクしながら見ていました。こんな人になりたいなぁ、という漠然とした憧れのようなものでしたが、自分が将来ありたい姿を固めた瞬間があの日、あの放送中に確かにありました。

 それから6年後、秘書として政治の世界に入り、今年で6年目に入りました。「カッコイイ」大人までまだまだ道半ば、しっかりがんばっていきたいです。(ハム)

第684号 穴だらけの安保法制