第665号 大義なき解散
安倍首相が、外遊から帰国する来週以降に、消費税10%への引き上げを見送った上、衆院を解散するのではないかとの憶測が報じられています。
◆解散の大義
憶測が仮に真実であれば、政府が考える今回の解散の大義は、厳しい経済状況を理由に消費税10%への引き上げを見送ることについて、国民の信を問うということになります。
しかし、消費増税法には、増税に際して景気回復を条件とする旨の「景気条項」があります。これは、民主党政権時に私が議連をつくり提言をまとめ、それに基づいて盛り込まれた条項ですが、この景気条項を前提とすれば、法が想定している経済状況を理由とする増税先送りについて、わざわざ解散して国民に信を問う必要は本来ないはずです。
◆本当の理由
では、解散の本当の理由はどこにあるのか。今回の解散報道の背景には、先月の二閣僚の同時辞任やその後の宮沢経産相の不適切な政治資金支出等をめぐる「政治とカネ」の問題があります。「政治とカネ」の問題は、自民党政権のアキレス腱であり、これ以上この問題を引っ張るよりは、解散により求心力を回復し、選挙後に新たな内閣をつくることで、この問題をあやふやにしようとする政権の意図が見て取れます。
加えて、消費増税見送りと、アベノミクスへの評価といった経済政策に焦点をあて選挙戦を戦うことで、集団的自衛権の行使容認などの安保政策の是非を背後に隠すことも意図していると推測されます。一方で、安倍首相の最大の関心は、集団的自衛権行使容認に向けた法整備であり、選挙後に控える通常国会では、選挙で得た民意をもとに、集団的自衛権関連法案の審議を与党ペースで進めようとすることも予想されます。
つまり、今回、仮に解散があるとすれば、その本当の理由は、消費増税の是非や経済政策の是非ではなく、「政治とカネ」問題によって失われつつあった政権の求心力の回復と、集団的自衛権行使に関する法整備に向け、政治的パワーを得ることです。まさに、国民不在の党利党略そのものです。
加えて、今国会で成立した閣法は、10日現在でまだゼロです。政権が今国会の最重要課題とした地方創生や女性活躍に関する法案も解散により廃案となる公算が大きいです。
◆堂々と勝負する
常在戦場をあずかる選対委員長として、いつ解散があっても選挙準備にぬかりはありません。堂々と勝負します。
安倍政権が、本来、審判を受けるべきは、①「政治とカネ」の問題、②特定秘密保護法や集団的自衛権行使容認をめぐる強引な政権運営、そして③置き去りの社会保障の三点です。
安倍政権が危うい政権運営を行った際のブレーキ役になるもう一つの軸として、そして、社会保障をはじめとした国民が支え合う社会の実現に向けて、民主党こそが、政権への不満や不安の声の受け皿にならなければなりません。真の争点を提示し、有権者に「政策」と「候補者」という形で選択肢を提示していく。選対委員長として、来るべき決戦に向けて全身全霊で臨みます。(了)
スタッフ日記「変革する時代の中で」
先日、北海道で生まれ育ち、父親の転勤で関西に来たという年配の女性と出会い、お話を伺いました。お父様は北海道の炭鉱で働かれていたそうです。
当時、石炭は花形産業で、街が潤い、発展したものの、約半世紀経ち、今では小さな町になってしまった、そう寂しそうに語って下さいました。
それからしばらくして、新千歳空港から車で3時間半、車中でその事を思い出しながら、親戚の結婚式が行われる旭川に向かいました。広大な平野部に出ると、辺り一面が真っ黒な何かに埋め尽くされているのに驚きました。
そこに並んでいたのは今まで見た事もないほど大規模な、見渡す限りのソーラーパネル群でした。きっちりと整頓されて並んでいる景色に私は圧倒されました。地元の方によると、ここ10年で次々と建てられ、街として助かっている面もある、とのことでした。
その話を聞きながら、時代の変革の中で街は姿を変え、そして、また新しい街が作られる営みの中で、地域では独自の特色を生かし、そこでしかできない取り組みを試行錯誤しながら発展していくのだ、とそんなことを感じました。
急進する北海道のメガソーラーもその1つかもしれません。もともとは農業中心の街だった旭川市も、旭山動物園の躍進があり、今や函館や小樽に引けを取らない道内屈指の観光都市となりました。
50年先の未来を想像することは簡単ではないけれど、いま住んでいる奈良の街がどのように発展していくのか、アンテナをいつもよりも高くして考えながら、今年もあと2カ月、年末に向け全力で走り切りたいと思います。(特命係長)