第646号 限定なき武力行使拡大 

2014年7月5日 (土) ─

 1日、安倍内閣は、閣議決定で集団的自衛権行使に関する憲法解釈の変更を行いました。

◆自衛権に関する私の立場 
 私が主張する集団的自衛権の限定的容認論と、安倍政権の閣議決定は根本的に違うものです。今回の閣議決定は、武力行使の範囲の拡大を前提としていますが、私の議論は必ずしもそうではありません。集団的自衛権の限定容認は、必ずしも武力行使の範囲の拡大を意味するものではありません。 

 私が集団的自衛権の限定容認論を主張する理由は、政府のこれまでの個別的自衛権のなし崩し的な拡大解釈への問題意識です。政府のこれまでの拡大解釈により、日本の自衛権の範囲は、すでに実質的に集団的自衛権に一歩踏み出しているのが現状です。それならば、個別的自衛権と集団的自衛権の概念整理をきちんと行い、個別的自衛権・集団的自衛権双方の限界にしっかりとした限定を加えるべきと考えます。そこには、「際限なき裁量行政」に限定を加えるという、私の政治家としての信念があります。

◆今回の閣議決定の問題点 
 閣議決定の問題は3つです。 第1に、明確な理由が示されないまま武力行使拡大ありきになっている点です。「平和国家」、「安全保障環境の変化」等の理由が挙げられていますが、武力行使の拡大が、なぜ平和国家としての地位確保に繋がるのか、また、安全保障環境の変化が具体的に何を指しているのか不明確です。仮に朝鮮半島有事への備えが理由ならば、それを明確に示すべきです。 

 朝鮮半島有事を理由とした場合には、武力行使拡大に地域的限定を加える議論に繋がるように、理由を示すことは、行政裁量を限定する根拠となります。はっきりと理由を示さない表現からは、政府のフリーハンドを残す意図が見て取れます。 
 
第2に、武力行使を限定する「新3要件」の位置づけが不明確なことです。閣議決定の文言上、この要件は、集団的自衛権に限ったものではなく、広く「武力の行使」に関するものとされています。これは、この新3要件が、集団的自衛権のみならず、集団安全保障にも適用される余地、すなわち、湾岸・イラク戦争のような国際紛争の場において、将来、武力行使を行う潜在的可能性を残すものです。 

 第3に、武力行使の限界設定が曖昧かつ不十分なことです。新3要件のうち「明白な危険」という要件も、明白な危険をどう判断するのか、それは「おそれ」でよいのか、「具体的かつ現実のもの」となっている必要があるのか、判然としません。 

 すでに、海上交通路の機雷掃海等について公明が難色を示すなど、自公で新3要件の解釈に食い違いが生じています。通常の法案であれば、国会審議の政府答弁などを通じて解釈は明確化され、行政裁量は限定されていきますが、今回の閣議決定は、与党協議というブラックボックスで決定されているため、解釈の明確化や行政裁量の限定は全く行われていません。プロセスの不透明性は、手続上の問題だけでなく、行政裁量の無限定性という意味で、実体法上の問題も生じさせるものです。国会審議を通じて、これまで「際限なき裁量行政」と闘ってきた政治家として、今回の閣議決定に強い危機感を覚えます。(了)

 

まぶち@国会「国会議員バッジ」 
 国会ほどバッジがはばを利かせるところはありません。議員でも、それを示すバッジをつけていないと国会の中に入ることができないのです。これは衆議院先例集(448・449)に「議員は任期中一定の記章を帯用する」「記章を帯用しなければ議院に出入りすることを許さない」と規定されているからです。 

 元参議院議員の田英夫氏は初めて全国トップで当選した直後、バッジをつけずに登院し衛視に制止されました。憤慨した田氏に、衛視は冷静に「そうお怒りになっても、これは先生方の先輩議員や同僚の先生がお決めになったことです」と答えたそうです。第67代内閣総理大臣の福田赳夫氏も首相当時、バッジを忘れて議場に入ろうとしたところを衛視に制止され、慌てて当時の森善朗官房副長官からバッジを借りて入場したそうです。  

 議員バッジは明治23年の第1回帝国議会開設とともに制定されました。当時は「貴族院議員に失礼があってはいけない」という理由で、貴族と一般を区別するための目印でした。明治36年の第19議会からは衆議院で警備上バッジの帯用が義務となります。参議院は戦後の昭和28年から「必ずつける」となりました。バッジを紛失すると、手続きをして実費で新しい物をもらいます。それをよいことに、次から次へと紛失届を出しては十数個のバッジを手に入れた某議員がいました。そのバッジを地方行脚の際に秘書や随行者全員につけさせ得意げに陳情のとりつぎをして歩いたそうです。こうした行為などが目に余り、その議員は除名処分となり議員の身分を失いました。権威の象徴とも言われるこの議員バッジ、外国議会ではほとんど例がなく、日本と韓国くらいだそうです。(了)

第646号 限定なき武力行使拡大