第552号 年金とデフレ

2012年8月4日 (土) ─

 社会保障と税の一体改革法案審議は現在、参院で審議をしています。衆院での三党合意に基づく修正法案についてはもはや大幅な修正はないでしょう。しかし、今もって、一体改革と称するならば社会保障分野についての議論はさらに詰めるべきだとの意見は巷に多いのも事実です。

 そこで、改めて政権交代以前の議論も含めて、年金とデフレについて考えてみましょう。

◆小泉政権下の制度改革
 出生率が低下し平均寿命が延びるなど、少子高齢化社会に拍車がかかる中で、小泉政権下の平成16年に大きな年金制度改正が行われました。

 まずは、年金収入の固定として①上限を固定した上での保険料の引上げ、②基礎年金国庫負担の2分の1への引上げが決められました。そして給付を制限し積立金の活用を決める③負担の範囲内で給付水準を自動調整する仕組み(マクロ経済スライド)の導入、④積立金の活用(おおむね100年で財政均衡を図る方式)が決められました。

 これにより、年金制度を維持するために際限なく保険料が上昇することに歯止めがかけられ、さらに労働人口の減少と長寿化( 平均余命の伸び)という、日本経済のマクロ的な動向を踏まえた年金支給額の自動調整の仕組み(マクロ経済スライド)が導入されました。 

 当時、100年かけて積立金と均衡させることを目指したため、この制度は「100年安心の制度」と呼ばれました。

◆マクロ経済スライドの盲点
 しかし、このマクロ経済スライドはインフレにおける自動調整の仕組みだったため、デフレとなった状況下で今日まで発動されることはありませんでした。これにより年金制度は100年安心とはならない収入と支出のギャップを生み続けることになります。つまり、デフレの継続により、年金制度は少子高齢化という日本経済の大きな流れに対し、自動調整できない状況に追い込まれてしまったのです。

 結果、デフレの継続により将来世代ほど実質年金の受取額が低下すること、つまり、世代間格差を拡大させることになるのです。

 もし、日本が早期にデフレから脱却していれば、「物価スライドの特例措置」は解消され、マクロ経済スライドによる自動調整により、年金制度は100年安心という言葉が示すように、より健全な制度となっていたと考えられます。

 しかし、実際日本は、デフレ脱却に対し消極的な日本銀行による金融政策のもと、デフレから脱却できていません。現在、「物価スライドの特例措置」や「マクロ経済スライドがデフレ下で機能しない」ことに対し、制度改正により対処する方向ですが、労働人口の減少、平均余命の伸びという日本経済の大きな流れは、制度改正を待つことなく進んでゆきます。 

 よって、早期にデフレから脱却し、2~3%の安定的なインフレという経済環境にすることは、制度改正と同等以上の効果を持つこととなり、年金議論に先立って最も重要なことだということを理解いただきたいと思います。(了)

 

スタッフ日記「つながりあう感じ」
 車の中でラジオを聴いていると、突然、昔大好きだった曲が流れ出すことがあります。 

 そんな時、僕はその曲が流行っていた当時の楽しかったことや、あんまり思い出したくない色々なことを何となく思い出して、うれしくなったり、切なくなったりしてしまいます。それで、急にCMになって曲が途切れ、我に返るのです。多くの人が一度や二度くらいそんな経験をされたことがあるのではないでしょうか?(もっとも、僕の場合は思い出したくないことのほうが圧倒的に多いのですが)

 こういう体験はとても不思議な感覚です。

 誰かがリクエストをしたり、DJが選曲することにより、曲を通じて、僕だけの個人的な思い入れだったものが誰か別の人の思いと通じ合うわけです。もちろん間接的なことではあるのですが、とってもステキなことだと思いませんか? 

 今はラジオだけじゃなく、インターネットでもたくさんの人と映像や音楽を共有することができます。人気のある映像などは何万回とアクセスされて、世界を動かすこともあるようです。 
犯罪やいじめの原因になるなど、インターネットには負の側面もついて回ります。でも、こんな風に多くの人と繋がる経験が増えてゆくのはとてもすばらしいことです。 

 もしかしたら僕たちの仕事にも似たようなところがあるかもしれません。知らない人同士が、代議士やまぶち事務所を通じて思いを共有し、繋がりあうことができる、そんなお手伝いができたらなぁ、と思っています。(チュウ)

第552号 年金とデフレ