皇位継承、残された課題
1日、今上天皇の退位に関する皇室会議が開催され、退位日が再来年の4月30日、新天皇の即位日が5月1日となることが決定した。
◆皇室会議と退位
皇室会議は、三権の長や皇族二方などで構成され、皇位継承順位の変更や皇族の婚姻、皇籍離脱などを審議する重要な役割を担っている。退位については明治以降初めての例ということもあり、法律上、開催に関する規定はなかった。今春の退位法の制定にあたっては、衆参両正副議長の下で与野党が協議する形で議論が進められたが、民進党が皇室会議の関与を強く求め、私も交渉の先頭に立ち、皇室会議の意見を聞くという形で法律に取り入れられた経緯がある。
皇室会議の関与を求めた理由は、憲法1条が、天皇の地位は、「国民の総意に基く」と規定する以上、退位は単に時の内閣の方針だけではなく、三権の長である衆参両立法府議長や最高裁判所長官などの意見を反映することが必要で、さらに、皇室問題の当事者である皇族方をも含めた審議が要請されると考えたからだ。
当時、民進党内でも、皇室会議に加えて、国会の関与を強く求める声もあったが、当時の皇位検討委員会の事務局長として取りまとめを図る立場の私は、国会関与を否定はしないが、皇室会議による議決を強く主張してきたものでもある。結果は「意見を聞く」にとどまったが、その成果としての今回の皇室会議ではあった。この点で、今回、退位に関する皇室会議が開催された意義は大きい。
しかし、今回、事前に退位日についての内閣の方針が報道され、それがあたかも既定事実であるかのように誘導がなされることで、皇室会議が形式的なものになってしまったのではないか、という疑問がある。今上天皇皇后両陛下は、国民に寄り添うことを何よりも大切にされてこられた。報道にあるような、官邸と宮内庁のメンツにこだわった綱引きによるかのような退位日の設定はあってはならないのである。国民生活に最大限配慮された退位日の決定こそ、陛下が望まれる形であり、決してそのことは、憲法4条に定められた「国政に関する機能を有しない」に触れることではない。十分に今回の立法趣旨を踏まえた決定プロセスになっているかどうかは、きわめて重要なことだと指摘しておくべき事柄である。天皇退位については、今回の退位法が今後の先例となることを国会質疑において確認している。また、皇位継承のあり方についての議論も速やかに進められる予定だ。皇位継承について、今後も皇室会議を開催して実質的な審議を行い、その反映がなされるような制度整備が必要なのである。
◆早急に皇位の安定的継承の議論を
今上天皇の退位日は決定したが、今後の皇位継承のあり方についての議論はこれからだ。再来年に皇太子が即位されれば、皇位継承資格者は3人だけとなる。また、慶事ながら女性皇族のご成婚による皇族減少の問題もある。皇室の永続に向けた議論は一刻も早く進めなければならない。
退位法成立に際しての付帯決議では、政府は安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等において速やかに検討を行うことが示された。また、私が質問に立った国会質疑においても、政府は退位後の具体的な検討に向けて適切な対応を取ることを明言している。にもかかわらず、現時点で具体的な対応が進められている様子は見えない。政府には速やかな対応が求められる。
◆伝統、憲法と皇室のあり方
私はこの国の「はじまりの地」である奈良の人間として、我が国の伝統としての皇室のあり方について考え、退位の問題に取り組んできた。また、今、憲法改正の論議が本格化しようとしているが、憲法は1章で天皇について規定しており、皇室のあり方を考えることは、憲法のあり方とこの国の形を考えることでもある。一人の政治家として、我が国の伝統と憲法、そして皇室のあり方について、今後も、発信を続けていく。