欧州、当面の危機回避へ
26日のEU首脳会合での決定については、とりあえずの懸念を払しょくする程度には至ったというのが率直な感想である。
23日の首脳会合での決定先送りについては、憶測も飛んでいたが市場は26日に「何らかの回答」が用意されているだろうとみていた。
そしてその答えが、予想の範囲内だったいうことで安堵感が出ているのではないだろうか。もちろん、予断は許されないがヨーロッパ上げての取り組み姿勢が見えつつあるということだと思う。
目の前のギリシャ危機については、第2次支援プログラムの民間部門関与がどの程度図られるかが焦点だった。
7月のユーロ圏首脳会合では、民間投資家が保有するギリシャ国債を(1)30年債に交換、(2)30年債へのロールオーバー、(3)30年債へのディスカウント交換、(4)15年債へのディスカウント交換、の4つのプランが提示されていた。いずれにしてもNPV(現在価値)ベースで21%減価が示されていた。
しかし、今回はヘアーカット(元本削減比率)を50%とすることを呼びかける(invite)合意がなされただけ。しかも、この50%は額面についてである。したがって、このことによって7月合意にあったNPV21%減価と等価かあるいは増加になるか減少になるかは現段階では明らかではない。
ここは、まだこれから詰めていかなければならない点だろう。
そして、最も関心の高かったEFSFの融資枠再拡充については、二つの方法が明らかにされた。一つはEFSFによる部分保証。二つ目はSPV(特別目的事業体)が創設されEFSFと官民の金融機関、投資家の資金で国債を引き受ける、である。
結局レバレッジによってしか再拡充の方法がないため、EFSFの部分保証で4~5倍の資金を動員するということ。
ここでも問題は、EFSFの部分保証で果たして「官民の金融機関」の動員ができるかと言うことである。SPVの発行する劣後債はEFSFが、優先債は「官民の金融機関・投資家」を想定しているのだが、果たしてそのようにうまくいくか。
これも詳細を11月に確定するよう、ユーロ圏財務大臣会合に要請するというが、まだまだ不透明さは漂いながら、しかしとりあえず前に進む、と言ったところのようだ。
ただし、EUは今回のことを契機により強固な体制へと転換を図ろうという動きの加速が起きようとしている。一方、根本的な見直しの可能性ももちろんあるのだが、経済・財政上の協調・サーベイランスは来年末までの財政収支均衡規定を法定化するあるいは憲法による手当までが議論されようとしている。
世界は危機の中にも反省をしつつ前を見て進もうとしている。我が国だけが取り残されて、ガラパゴス化していっていることに危機感は募る。