凍土遮水壁への疑問

2013年5月31日 (金) ─

 昨日、福島第一原発の地下水流入に対する対策として凍土遮水壁の構築を茂木大臣が東電に指示したと報道があった。政府の汚染水処理対策委員会が「凍土遮水壁」を有力な対策として取りまとめたようだが、果たしてこの方法がベストなのだろうか。

 考えられるメリットはコストと工期。数百億円程度ということから、かつて僕が総理補佐官として検討してきたベントナイトスラリーウォールに比べて安価かもしれない。また、凍土にするための凍結管施工はベントナイトスラリーウォールよりも簡易にできるだろう。

 要は、早く安く出来るということ。

 一方、デメリットはどうか。

 地下水流入の地中が、均一に熱が伝播され、均一に水が存在するという理想条件であれば効果があるかもしれない。

 しかし、凍結させようとする土壌に異物や構造物があれば、そこを抜け道として水か進入する。理想的状態を前提としているのは危険だ。

 そして、この工法の方がスラリーなど物理的な壁よりも効果が高い、と言っているが、これはあくまで理想状態であるとの前提に過ぎない。

 更に、疑問が発生するのが、本当に凍るのかどうかだ。400トン/日もの大量かつ温度が高い地下水が供給され続けている中、一部の温度を低下させるだけで完全な遮水状態を生み出すほどの凍結が起きるかも疑問だ。

 例えて言うなら川の中に凍結管を入れて、流れが止まるのか?ということだ。

 そして、30mという深さによる地下水圧の問題もある。

 凍結した土壁が、流入する地下水圧に耐えられるかどうか。水が浸透する力は非常に強く、すぐに水が浸入する恐れがある。というように、技術的な検証が十分とは到底思えない。

 またコスト面でも長期的にみて本当に安いのか?膨大な維持費がかかることも想定される。施工などの初期コストは抑えられても、それ以上の維持費がかかり続けかつ定期的な更新費用がかかるだろう。

 長期的な側面では、維持管理が可能かという問題もある。仮に理想状態に近い状況だとして、短期間であれば凍結によって効果が出る可能性があるものの、長期的には上記の理由などで事実上穴だらけになって効果がなくなる可能性が大きい。また、埋設配管などの寿命は短い。

 以上考えると、長期的な廃炉(封じ込め)を前提としておらず、10年程度ごまかすためのやり方に過ぎないのではないか。その間に、熔けた燃料を取り出せるだろう、という楽観的な考えに基づいてはいないか。。

 あえて言えば、時間をかけているうちに、そのうち汚染水を海に流すことに合意できるだろう、というよこしまな考えが魂胆としてありはしないか。

・・・などなどの疑問が沸いてくる。

 本来はこのような、うまくいくかどうかわからない手法よりも、廃炉作業が長期戦になることを前提に、恒久的かつ抜本的な対策を講じる方が望ましい。

 やってみて、うまくいかなかった、という時間のロスは許されない。

 地下貯水槽という東電のごまかしを止めた茂木大臣が、また別の勢力のごまかしに騙されないよう、国会で質していかなければならない。

凍土遮水壁への疑問