電力システム改革を質し正す

2013年6月8日 (土) ─

 東日本大震災、福島第一原発事故を契機としたエネルギー政策の議論の中心をなすとも言える「電力システム改革」。地域独占と指摘される既存大手電力会社を中心とする電力供給体制を、今後新たにどのような姿に形作るかが問われている。

 電気事業法一部改正法案審議の質疑に去る水曜日に立った。国会も終盤、質疑に立つのも今国会最後かもしれない。

 取り上げたのは、「小売全面自由化」について。2000年より小売自由化が段階的に始まり、2011年度時点で、自由化部門は全電力量の62%を占めるようになった。しかし、新電力と称される新規参入事業者のシェアは、自由化された需要の3.6%、全需要の2.2%にとどまる。今もって、既存大手電力会社が市場を占めているのである。世に広報される自由化比率は62%であるが、実態は異なる。

 では、なぜ小売自由化が進まないのか?そのことを明らかにする質疑を目指した。

 まず、新規参入事業者にとって課題となるのが、電力の供給源の確保。自ら安定的な大規模発電設備を新規参入事業者が持つのは困難だ。

 そこで、安定的な電源確保に重要となってくるのが、地方公共団体の発電事業、すなわち都道府県などのダムによる水力発電である。

 自治体公営企業による水力発電の規模は全国で約240万キロワット。原発2~3基分に相当する。実はこれらの電力が東京都を除いてすべて既存大手電力会社に随意契約で売電されている。東京都も今年3月に初めて入札により新規参入事業者に売電することとなったのだが、なぜこのように自治体が既存大手電力会社に随意契約で売電することが当たり前になったのか?

 そもそも自治体の売買契約は地方自治法234条により一般競争入札が原則として定められている。随意契約については、地方自治法施行令又は地方公営企業法施行令で定められた事由に該当する場合のみだ。

 このことを調べていくと、二つの理由に行きつく。

 一つは、かつての自治省の職員が記したとされる「地方公営企業法逐条解説」という書籍の記述。

 この本はいわゆるコメンタールで、この本では水力発電などの地方公営企業が既存大手電力会社に売電することを定めている。ほとんどすべての自治体がこの「地方公営企業法逐条解説」を参照して業務を行っているために、電力会社に随意契約で売電されているという。

 しかし、この本は98年の出版。2000年の自由化以前の解説が今もって公営企業から既存大手電力会社への随契による売電が行われる要因となっていることに驚きを禁じ得ない。総務省も、このことについては他人事のような態度で、これは放置できるものではない。

 そして、もう一つの理由が「電源立地地域対策交付金交付規則」。

 これは、大臣告示による「規則」だが、これにより発電を行う公営企業の地元自治体に立地交付金が落される仕組みとなっている。

 実はこの規則によって、公営企業が大手既存電力事業者に電力を卸すことに対して立地交付金を交付する規定となっている。したがって、公営企業が新規参入事業者に売電すなわち電力を卸すと、立地交付金が下りなくなるのである。

 これでは、新規参入事業者への電力供給が進むわけもなく、かつ上記の逐条解説によって随契が法の定めと解釈されることが慣行となっているなど、政府の仕組みの中でそもそも自由化を進める体制が整っていないと言わざるを得ない。

 茂木大臣に上記の指摘を行い、「電源立地地域対策交付金交
付規則」の大臣による告示の見直しを求めた。茂木大臣からは、「見直しを検討しなくてはいけない、長々としない」との答弁を得た。「立地交付金規則」の見直しを大臣が国会答弁したのは初めてだ。自由化が真の競争促進となって、電力システム改革が公平な環境で進むことを強く推進しなければならない。

 ここでも、また、質疑で政府をそして政治を動かせたとの自負がある。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130605-00000130-jij-pol
http://digital.asahi.com/articles/TKY201306050679.html?ref=comkiji_redirect。

 水曜日の質疑の冒頭で、地下遮水壁の質疑への御礼を茂木大臣からされた。もちろんそれはそれで、恐縮しながらも受け止め、頑張ってほしいとのエールを送った。

 でも、それはそれ。これはこれ。

 茂木大臣はじめ政府には、政府を経験したものとして、是々非々で臨む。

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