ロシアのたすき掛け人事

2011年9月26日 (月) ─

 2012年は先進諸国での指導者交代の季節となるが、早々にロシアは新体制を示した。

 いわゆるプーチンとメドヴェージェフのたすき掛け人事である。

 プーチンとメドヴェージェフによる「システム」は不変であることは、メドヴェージェフ大統領、プーチン首相体制のなかでも明らかだったが、今後6年間(さらに2020年を目指して)継続していくというメッセージでもある。

 今回の次期大統領決定に関して、様々な意見が示されているが、以下の点が重要だと思っている。

 ひとつは、いわゆるプーチン・メドヴェージェフの「タンデム」が完全に機能していると思われること。

 すなわち、No.1とNo.2はプーチンとメドヴェージェフの2人しかいない。そして、この二人に「政争」はなく、完全に意見をすり合わせながら国政の運営に当たっていると考えられること。事実、この4年間に第3の人物が現れる余地がないほどに「タンデム」は機能していた。

 ただし、社会経済分野の発展ペースはやや遅い。

 「タンデム」は、この点に関し、西側の指導者やメディアの意見(権威主義だとか独裁だとか)には耳を傾けないが、マーケットの意見には耳を貸している。すなわち、マーケットはプーチンが首相であるより、大統領である方が先行きを見通しやすく、長期的な投資をしやすいという「心理的要因」が思いのほか重要であることがわかった。よって、プーチンが方向を打ち出し、メドヴェージェフがそれを着実に履行するという役割の方が、社会経済分野の発展を導きやすいとの結論に至ったのではないかと、僕は考えている。

 一方で、ロシアについて専門家であり高い見識を持っておられる佐藤優氏は「権力闘争に敗れた」との見解を述べられている(http://sankei.jp.msn.com/world/news/110925/erp11092506490003-n1.htm)が、氏が言われるような「外交防衛」の得失点は実はほとんど関係ないのではないかと僕は思っている。

 ましてや対北朝鮮外交などロシアでは極めて関心が低い。また、対日関係のスタンスも特に変わらない。

 実際、外交防衛にメドヴェージェフの独自路線はほとんどなかったし、どの国に対しても実利的なスタンスでやっており、このことは今までも、そしてこれからも同じだろう。

 したがってプーチンとの交代によって劇的な日露関係の改善を期待するのは、安易ではないかと思う。本当に「お互いの利益」になるアイディアがあれば、今まででも改善できる余地はあったし今後もあるはずである。ゆえにロシア側の変数に期待するのはナイーブと言わざるを得ないのではないか。

 最大の問題は、本当にこれからの6年間、プーチンが集中力を維持できるかという点だ。おそらく、これから大統領選挙までに閣僚級や国営企業の首脳部を中心に一部の人事刷新があるはずであり、それがメドヴェージェフにとってやりやすいメンバーになるかどうかがカギである。

 さっそく、クドリン財務相は「今季限りで退任」と辞任を示唆している(http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20110925-OYT1T00508.htm)。

 少なくとも、これまで国家のために働いてきたような人々の処遇をうまくできるかがポイントになるだろう。

 これを誤ると「タンデム」は身内から刺されることにもなりかねず、さすがに失脚を招くようなことはないと思われるが、マーケットとの関係ではマイナスだ。

 辛辣に記しはしたが、あえて今までの我が国のあいまいさを排除した考えを示した。

 いずれにせよ、東アジアの新たなセグメントの中でロシアを注視し、わが国がどのように対応していかなければならないかを考えていく必要がある。

ロシアのたすき掛け人事