第1197号 多党化時代の総理指名

2025年10月18日 (土) ─

3か月の政治空白を経て、ようやく21日に臨時国会が開会する見通しです。しかし、真っ先に行われる首班指名は、編集時点(16日)で与野党各党の交渉が続いており、誰が新総理に選出されるかは未だ不透明な情勢です。

 

◆揺れる与党

高市新総裁が選出された際は、あたかも次期総理が決まったかのような報道ぶりでした。

しかし、衆参両院で自公両党が少数派に転落した以上、誰が総理になるかわからないという事態は当然想定されていました。さらに、公明党の連立離脱が政局を一気に加速化させ、野党による政権交代も現実味を帯びてきました。

公明党が26年にもわたる自民党との連立を解消したことは、たいへん重い決断だったと思います。

自民党にとっても大きな衝撃であったことは疑いなく、この公明党の重大な決断を受け止めて、私たち野党がどう行動していくかが問われることになったと受け止めています。

 

各野党の思惑は

立憲民主党は、野党第1党として、複数の他野党に総理候補一本化協議を働きかけました。他党の党首を総理候補として立てることも選択肢として残しています。今の自民党の体質では、

誰が総裁になろうと改革は不可能で、何十年間も繰り返された旧態依然とした自民党政治が今後も続くだけだと確信している以上、何としてでも自民党に代わる政権を作るしかないという決意があるからです。

残念ながら16日時点では、総理候補一本化について、維新・国民民主との間で見解に相違があり、合意には至っていません。

維新は自民との連立を視野に協議を行う意思を示していますが、現野党3党による党首会談も継続しており、各党とも慎重に自らの立場を見極めている状況です。政権交代の可能性は消えたわけではないという認識です。

 

多党化政治の本質

他野党の党首を首相候補として立てるのは節操が無いという批判もありますが、私は、こうした柔軟な対応は、多党化時代ではむしろ普通のことだと考えています。

多党化政治の本質は、それぞれの党が他党との熟議を重ね、時には譲り合いながら最適な解を探っていくところにあります。そもそも多党化は、国民の間に多様な意見が存在しているということです。

最初から基本政策が一致しているなら一つの党になれば良いのであって、違いがあれど、それを擦り合わせてよりベターな

政策を実行することで、国民の声を出来るだけ反映させていく政治が多党化政治なのです。

例えば、今真っ先に求められる政策は、緊急的な物価高対策であって、その点について一致しているなら、時限的な協力で政権を組むことも選択肢だと思います。

そして、一強与党による政権の方が、多党連立・連携政権より安定し、国民のための政治を行えるという考えも幻想です。 長期にわたる一強統治は、既得権を固定化し、権力維持そのものを目的とした政治へと堕してしまい、結局社会が衰退する結果となるのは、多くの権威主義的独裁国家で見られた現象です。

政権の形が組み換わり、常に異なった立場の政党が議論を戦わせてより良い政策を模索していく政治の方が、一見不安定に見えても、社会を活性化させ、イノベーションを生み出し、発展させていく原動力となるのです。

その点で、長期の停滞を生んでいる自民党一強政治を今後も続けることは、日本をこのまま停滞させ、衰退させていくだけだと考えます。

野合という批判はあり、実際の合意は難しい状況にあるとしても、新しい政権の形を模索し続けていくことが、われわれ野党第1党の使命だと考えています。

 

スタッフ日記「銀杏の木」

ようやく秋らしくなりました。東京の秋といえば銀杏の木です。明治神宮外苑のいちょう並木はよく紹介される観光スポットです。あまり知られていないのですが、国会議事堂前のいちょう並木もなかなかのものです。

11月中旬から12月上旬にかけて、約200メートルにわたるいちょう並木が黄金色に染まり、国会議事堂の白亜の建物と見事なコントラストにみいってしまいます。この風景をご紹介したく、昨年何度か写真撮影を試みたのですが、残念ながらインスタ映えするものが撮れませんでした。今年もチャレンジしてみたいと思います。

高さ20メートル近くにもなるいちょうの木々が見下ろす中、議員の先生や、秘書、記

者たちが行き来します。

またこの通りでは野外集会も開かれることがあります。日本学術会議をめぐる法案に抗議する学者たちの座り込みは記憶に新しいです。銀杏の木には国会を取り巻く人々はどのように映っているのでしょうか。

このいちょう並木ですが、議員会館から国会議事堂にわたる横断歩道にある一本がメスの木で銀杏の実を落とします。銀杏の実は紅葉の始まる前、9月くらいから落ち始めます。その独特のにおいには困りものですし、横断歩道がすべりやすくなります。

そのような悩みもありますが、いちょうの実を落ちるようになると秋の訪れを感じるのです。       (ななリターンズ)

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