第1191号 石破総理退陣へ
8日、石破総理は辞任を表明し、昨年に続き秋の自民党総裁選になだれ込むこととなりました。
◆3つの選択肢があったが
総理は参院選の与党敗北後も政権運営への意欲を失わず、仮に総裁選の前倒しになっても、自らの再出馬や、総理の専権である衆院解散まで選択肢に入れて、ギリギリまで政権を維持しようとしました。
森山幹事長の辞意は慰留含みと言われていましたが、他の三役の辞意表明も併せて、孤立無援の四面楚歌となって解散や再出馬の強行の可能性も絶たれ、ついに辞任の決断に至ったとされています。
◆総理2つの誤算
参院選後は、下がり続けていた支持率が急上昇し、野党もそれぞれがバラバラで、とても新しい政権の枠組みを示すことが出来ない中で、自民党内で世論を考慮して総理を擁護する声も出始め、総理は8月の間は続投への自信を深めていたと思われます。
しかし、続投へ自信を深めていたはずの総理も2つの読み違いがありました。1つは、総裁選の前倒しを要求する場合には、議員が記名することを決定したことです。これは、執行部へ忠誠を誓うかどうかの踏み絵を示す傲慢な態度と受け取られ、一気に同情の声も冷めていきました。
2つ目は、石破政権の閣僚たちが政務三役に対して辞任してから前倒しに署名せよと、更に圧をかけていったことでした。元々巨大派閥でもない政権の中から、圧力を掛ける発言が出てきたことで、議員たちが総理に見切りをつけ、党内工作も不可能な状態に陥ったと考えられます。
総理としては持論である防災庁設置や地方創生など、まだまだやりたいいことはあったでしょうが、結局最後は自民党の論理からは離れられず、元々苦手だった党内政局の勘所を誤り、身を引かざるを得なかったのが現実でしょう。
◆政治空白は許されない
結局、自民党はあいも変わらず自分たちが選んだ党首を途中で引きずりおろし、国民不在の権力闘争に明け暮れています。自民党は、総裁選のお祭り騒ぎで失政を覆い隠し、新総理誕生で支持率回復の後、即、解散総選挙という使い古された手法で政権維持を狙うのでしょうが、経済・外交と難局が続く中、国民を馬鹿にしているとしか言いようがありません。
すでに参院選から1月半が経過しているのに、辞める、辞めないの党内のゴタゴタで、政治空白が生じたままです。その上、総裁選や組閣が実施されると臨時国会召集は10月半ばにずれ込むことが予想され、政治空白は3か月かそれ以上に及ぶのです。自民党が公約に掲げていた速やかな給付金の支給など、全く不可能になります。まして、新総理が解散総選挙に踏み込もうものなら、今年1年のうち三分の一は政治と空白となり、選挙に明け暮れることになり、国民の理解はとうてい得られないでしょう。
立民党としては、権力闘争と選挙ばかりの政治と一線を画し、今は参院選での事実上の敗北を謙虚に受け止めて、野田代表の下、一致結束すべき時だと考えます。11日には新しい執行部が決まる見込みですが、多党政治が本格化する中、何よりも主張してきた政策を与野党間協議の中で一つ一つ実現していくことに全力を尽くすしかないと考えます。