第1189号 コメ増産のために

2025年8月30日 (土) ─

新米の流通が始まりましたが、価格は去年の1.5倍ほどに値上がりしており、コメ全体の平均価格も再び上昇の傾向が見られます。

◆新米流通も高値続く

新米が供給されれば価格は下がるだろうという予測は去年の夏もありましたが、結局コメの高騰は続きました。今年は、コメを集めるために農協が農家に事前に支払う概算金が高騰しており、新米が流通したとしてもコメ価格は簡単には下がらないだろうという専門家の見解が見られます。もはやコメ高騰は一時的な現象ではなく、完全に長期的なトレンドとなったと言えます。

◆コメ増産は困難な状況

そんな中、石破総理は減反で生産を減らしてきた従来のコメ政策を抜本的に転換し、コメの増産に踏み切る方針を表明しました。政府は、コメ価格高騰の原因を、高温障害等により精米歩留まりが悪かったこと、インバウンド需要が増加したこと、1人あたりの消費量の増加等があったためとの見解を示していますが、より根本的な原因としては、政府が長年、コメ生産の課題を放置してきたことにあります。

コメ生産の課題とは、収益性と継続性です。日本のコメ農家の多くは、年金生活者が細々と営んだり、普段は普通に会社等で働き、週末を中心に田の手入れを行う兼業農家で、総じて極めて小規模です。いわば商売としてではなく、所有地の管理として水田を営む農家が多く、その多くは実質的に赤字で収益性はありません。

例えば農業に必要な主な機械を挙げると軽トラック、田植機、トラクター、コンバイン、草刈り機、農薬散布機がありますし、主な物品として、苗、農薬、肥料、鍬、鋤、スコップに加え、軽油・ガソリンも必要です。さらに農家の労働は早朝、夕刻に作業し、ゴールデンウィーク・秋の連休に苗を植えたり稲の刈り取りがありますし、夏の期間は水入れ、草刈り、草取り、農薬散布、水路清掃、共用設備清掃など盛りだくさんです。

このような重労働に加え、数百万円もする農業機械を一式揃えていけば必然的に赤字となり、誰も跡を継ごうとしなくなるにも当然です。コメ農家はこの20年で6割減少しています。そして、2020年の基幹的農業従事者に占める70歳以上の割合は58.9%なのに、50代以下は合わせて11.3%に過ぎません。このようなコメ農家の崩壊が進むのを政府は長年放置してきたのです。今になってコメ増産の掛け声をかけても、実際の増産は難しいでしょう。

◆業改革3つの視点

食料自給率の点からもコメは重要です。コメによりカロリーを賄ってきたかつての日本の自給率形態は変化し、昭和40年代には73%だったカロリーベース食料自給率は令和5年度には38%にまで低下しています。食糧危機に備えるためにも、抜本的な改革に手をつけなければなりません。

改革の視点は3つです。個々の小規模農家の手作業や長年の慣習による農業から脱却することが1つ目です。世界はすでに自動化されたトラクターやAIによる管理システムなど、農業に最新技術を取り入れています。農地の集約化・大規模化を強く進め、収益の上がる農業への脱皮が必要です。

2つ目は後継者確保です。単に農家に生まれた方の家業後継ぎに期待するのではなく、都市住民が兼業で二地域居住で農業を営んだり、ビジネスとしての就農支援資金を思い切って支援するなどの工夫が必要です。

3つ目は金融業で100兆円の預金を集めるなど、巨大な独占企業化した農協の改革です。政府の政策の旗振りにとどまらない農家への指導や相談支援等の改革で、新たな農業ビジネスの誕生が期待できます。

今までの農政の延長で、補助金でごまかすだけではコメ増産は不可能。このことを強く主張したいと思います。

 

 

 

 

第1189号 コメ増産のために