第1148号 石破内閣との対峙
27日、自民党は石破茂氏を新総裁に指名しました。1日には臨時国会が召集され、石破新総理が誕生します。
◆二転三転した総裁選
総裁選は、当初、「刷新感」が必要とされ、まだ40代の小泉進次郎候補や小林鷹之候補がいち早く手を挙げ、国民に向けて新しい自民党をアピールしようとする戦略が採られました。
その後も現役閣僚や派閥の元領袖・幹部などの出馬が相次ぎ、賑やかさが演出されていきました。その中でも、国民的な知名度で一歩リードしたと見られたのが小泉候補でした。
しかし、その後、当初優勢と見られた小泉候補が政策討論等を経て勢いを失い、自らの主張をある程度封印して自民党的に穏健な主張に徹した石破候補と、自民党の岩盤支持層と言われる保守層に向けたアピールを繰り返した高市候補が党員票を伸ばし、最終的には決選投票で215票対194票の僅差で破り、石破候補が当選を決めました。
高市候補の主張するやや強硬な保守系路線よりも、石破氏の穏健路線が支持を受けたこと、立憲民主党代表に選ばれた野田佳彦氏との関係からも、同じく穏健保守中道の色が強い石破氏を選ぶことで、総選挙の対立軸を消滅させ、大勝はしなくても手堅く政権を維持しようとする自民党議員の意思が働いたと思われます。
しかし、大量の裏金議員や旧統一教会と関係のあった議員の票を失うのを恐れてか、政治改革や旧統一教会との関係の再調査に積極的な候補者は誰一人おらず、自民党の内輪の理屈だけで代表選が展開してしまった感は否めないと思います。
◆新総理の人物像は
石破新総裁は、私が世話人を務める田中角栄研究会にも加わっていただいておりますし、個人的にも親しくさせていただいています。
温厚で実績豊富、政策にも強い方ではありますが、自民党のトップに立った今後も、自らの信念を貫く改革ができるかは疑問を持たざるを得ず、自民党の体質は大きくは変わらないと見ることができます。
それほど自民党の権力構造というのは、旧来の既得権と密接に結びついており、たとえ総裁であったとしても、あの手この手で取りこまれ、いつしか政権も骨抜きにされてしまうのです。
◆慎重に解散を判断か
新総理になればすぐにでも衆院を解散し、総選挙を行う旨を表明していた小泉候補とは違い、石破総裁は解散には慎重な姿勢を貫いていました。就任直後の世論調査を見ながら、解散時期を慎重に見極めていくものと見られます。
政局に注目が集まる今、能登半島では震災に続いて豪雨により甚大な被害が発生しています。災害に苦しむ被災地住民を置き去りにして、お祭り騒ぎの選挙を行うことは適切ではありません。
また、10月からも多くの商品の値上げが予定されており、物価高対策、国民生活の底上げも急務です。新政権の政策を提示し、被災地復興と経済対策の補正予算を編成するなど、一定のめどをつけた上で解散総選挙というのが常道です。
立憲民主党としても野田佳彦新代表を選出したところであり、新総理との間で十分な論戦を戦わせた上で、国民に政権選択を委ねるべきです。臨時国会は1日からです。石破内閣との論戦に備えてまいります。
スタッフ日記「プロレスと政治」
立憲民主党の野田佳彦新代表は、政界一のプロレスマニアとして知られています。
私もプロレスファンで、昨年も東京ドームで行われた有名レスラーの引退試合に駆け付けましたが、試合の合間にドーム全体がどよめいたので何が起きたのかと思ってビジョンを見ると、リングサイドに座る野田さんが大きく映し出されていました。
プロレスと政治、一見何の関係も無さそうな両者ですが、実は大いに関係があるのではないかというのが私の仮説です。もちろん、両者は真剣勝負の場であり、試合や論戦、選挙で相手に勝つことが求められますが、ただ単に強い者が人気なわけではないということが共通していると思います。
レスラーは力強い技で相手をねじ伏せると同時に、時にはマイクアピールで愛嬌のある姿を見せたり、時には己の感情を爆発させて観客の心に訴えかけることが求められます。観客はレスラーの一挙手一投足に人生を見、感情移入してその世界に浸るのです。
政治も同じく、単に正論を冷徹に述べて相手を論破し、一切の弱みを見せないような政治家が人気を得ることは難しいと思います。
つまり、人の心をつかむのがプロレスの本質であり、政治の本質でもあり、目指すものは極めて似通っているのではないかと思うのです。現に、今までも多くのレスラーが引退後、または現役のまま政治家に選ばれてきました。
野田新代表も、プロレス観戦を通じて人の心をつかむ術を養ってこられたのかもしれません。国民の心をつかみ、プロレスのような熱気とわくわく感に満ちた政治が実現することを期待したいと思っています。(アタリ)