第1136号 年金と働き方

2024年7月6日 (土) ─

 厚生労働省は3日、将来の公的年金の財政見通しの検証結果を発表しました。

◆年金目減りと老後の生活
 検証結果では、今後の経済成長に関して様々なケースを想定して、年金給付水準がどのように変化するかを示しています。

 現在、年金給付水準は現役世代男性の平均手取り収入の61%程度ですが、少子化が進む中、今後はこの率の低下が想定されます。

 仮に、日本経済が今後高成長を実現した場合には、中期的に57%程度の給付水準が維持されますが、ここ30年間のように成長率がほぼ横ばいで、経済成長が実現できないケースでは、2050年代には約50%程度に減少する見通しとなっています。つまり、年金給付水準は現在よりも実質的に約2割目減りするということです。

 今の経済政策を続ける限り、とても日本経済が高度成長ルートに乗るとは思えず、今の現役世代は、将来的に目減りした年金で、老後は苦しい生活を余儀なくされることがあらためて明らかになった検証結果でした。
 
◆人手不足なのに肩たたき
 年金の目減りとともに、現役の中高年の皆さんを不安にさせるのが日本の労働慣行です。その一つが、50代も半ばを過ぎると、役職が格下げされ、それに応じて給与も引き下げられて定年を待つ身となる慣習です。まだまだ働き続ける意欲があるのに50代半ばで役職定年となり、給料が半分以下になって生活が苦しいとの声もよくいただきます。

 一方で、今、人出不足は深刻で、人件費高騰などを原因とする人手不足倒産は、今年上半期だけで182件発生し、過去最多のペースです。

 日本企業は、高度経済成長期の慣習を引きずり、多くの企業で新卒一括採用と、一律の役職定年や定年を定めています。これには人事のサイクルを活発化するメリットはあるでしょうが、労働力の点では損失です。

 十分な知識と経験を持った中高年齢層を労働力として活用することで、人出不足を解消し、収入減への不安をやわらげていくことが出来れば、経済も活性化します。

◆雇用継続で年金問題解決にも
 中高年の労働市場への参加は、社会保障負担の点でも重要です。膨らみ続ける社会保障費用ですが、だからといって今までの定年と引退を前提とした労働慣行を基に、現役世代に社会保障負担と重税を課すばかりでは、消費は冷え込み、少子化はさらに進んで経済は成長しません。
 増税ではない解決方法の一つとして、元気で意欲のある高齢者には出来るだけ働き続けてもらうという方法が有効です。そうすれば年金だけに頼らなくても良い高齢者も増えていきます。
 実際、70歳定年制をもうけようとする企業も現れてきています。平均寿命が伸びる中、60歳前後で定年という一律の枠を設定するのではなく、高年齢層の体力やライフプランに合わせて働き続けることのできる社会を作ることが、社会保障の制度設計に必要なのです
 今まで引退していた世代に労働者として働き続けてもらうことによって、人出不足も一定程度解消され、また、体力が若干衰えた高年齢層に合わせたIT化の推進や時短勤務などの働き方改革も、現役世代も含めて進むでしょう。
 人出不足というと、外国人労働者を大量に移民させれば良いという主張もありますが、まずは国内にも中高年の豊富な熟練労働者がいることに目を向けるべきです。
 年を取れば一律に引退すべきという昭和の常識を引きずった働き方を維持したままでは、社会は変わっていかないと思います。

 

スタッフ日記「ご縁って不思議」

 紫陽花のきれいな季節だと思っていたら、早いものでもう7月、時は待ってくれません。

 梅雨の晴れ間の景色を眺めていたら、小さな木々は生き生きと水分を含み、キレイな薄いグリーンの田んぼ、その山裾にこれから咲こうとしている1本の「ささゆり」を見つけました。

 白色にほんのり薄いピンク色で明日にも咲きそうなささゆり。山手の水分を含んだささゆりは清楚でみずみずしい印象で、「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」ということわざを思い出しました。

 生け花に「花は野にあるように」という言葉がありますが、これは、お花を野に咲いているように生けるのではなく、たとえ1輪でも、野に咲く花を想像させるように生けなさい、ということだそうです。本当にその通りだなと思いますが、なかなかそうもいかない、というのが日常です。

 また、お花、お茶、お料理など、どの道をとっても一番大切なことは自分自身の心の持ち方だと教わりました。

 お花もお料理も一流の素材を準備されたとしても、専門家は別として、私たちがそれを活かすことは非常に困難で、知らず知らずのうちに自分の心の本性がどこかに現れ、受け取る側にそれが伝わってしまうものです。

 自分の気持ちを伝える事、誠心誠意相手に臨むこと、そこから心が通じ合い、やがてご縁が始まる、また、そのご縁がご縁を呼び、大きなご縁となって戻ってくる、それはまるで神様仏様のご加護かと思う事があります。

 これからもたくさんのご縁がありますように、と願っています。(ムーミンママ)

第1136号 年金と働き方