第1133号 住んでいる街が消える
10日、政府はこの10年間の地方創生に関する政策の効果に関する報告書を発表しました。
そこでは、「国全体で見たときに人口減少や東京圏への一極集中などの大きな流れを変えるには至っておらず、地方が厳しい状況にあることを重く受け止める必要がある」と記されました。従来から指摘されてきた東京一極集中の加速と、地方の「消滅危機」を政府自ら認めた格好です。
◆奈良県の半分以上が消える
専門家の指摘はよりシビアです。今年4月に発表された民間の有識者グループ「人口戦略会議」の分析レポートでは、2020年から2050年までに20~30代女性人口が半数以下になる自治体が全体の約4割にあたる744に上るとされました。これらの自治体は、子どもが増える見込みがないため、最終的に人口減少で消滅する可能性があると指摘されています。
奈良県も例外ではありません。
県内39市町村のうち半数以上の22市町村が消滅可能性があるとされ、南部、東部ではほとんどの市町村が該当します。全国で23しかない「特に構造的に深刻な自治体」には吉野郡11町村の中から5町村が選ばれており、過疎の深刻さが伺えます。
こうした自治体が実際に「消滅」するのは遠い先ですが、消滅に至るまでにも様々な生活上の障がいが現れてきます。
生活道路の多くは整備が出来ず廃道と化す恐れがあり、病院や消防といった公共施設の維持も困難となるでしょう。
また、そもそも行政サービスを担う公務員もいなくなり、消滅の前に自治体として行き詰まることが容易に想像できます。
◆東京が全てを吸いこむ
政府報告では、東京一極集中の流れが止まらないことも認めています。
東京への労働力流出は高度経済成長時代からありましたが、当時は日本全体で人口が増えていたので地方も元気でした。
人口減少時代に突入した今、地方は一方的に東京圏に人口を奪われている形です。そして、東京圏に転入する人の大半は10代後半~20代の若者が占めており、かつ女性が多いという特徴があります。これでは地方の少子化は進展する一方です。
また、東京は全国から若者を引き付けていますが、合計特殊出生率は0.99と全国最低です。この現象はしばしば、全てを吸いこみ光さえ脱出できないブラックホールに例えられます。
◆国と地方の再分配
今の日本では、個人レベルでは富裕層と中間層以下の層が分断され、国のレベルでは人口や豊かさの点で東京と地方が分断され、地方には人材も職場も足りません。
地方を復活させるには、国と地方の大胆な再分配が必要です。
今、大手企業や価値の高い不動産は東京に集中しています。例えば、地方に拠点を移す企業に大胆な税制上の優遇を与える、都心部の固定資産税を上げて分散を図る、などが考えられます。
また、地域を限定して規制緩和を行う今の「国家戦略特区」も結局国の意向に沿った無難で中途半端なものばかりです。例えば公共交通全体が自動運転化された街や、建築・デザイン規制が大幅緩和された街、リモートワーク労働者のみに移住を認める街など、規制を大胆に取り払ったビジネス展開と税優遇を地方に認め、都市からの移住とセットで起業者や労働者を募るなど、考えられる方法はいくらでもあります。
いつまでも霞ヶ関視点で考えた補助金で振興を図るのが中心の「地方創生」にこだわっていては、自治体消滅は止められないのです。
スタッフ日記「沖縄移住」
先日、小学生時代から仲良くしている2つ年上の先輩から話がある、と呼ばれました。
何だろう?と考えながら待ち合わせ場所に向かうと、先に来ていた先輩が駆け寄ってきて「マッちゃん、やっと移住先見つかったわ!」といきなり言われ、驚きました。
聞けば、私が以前紹介した沖縄の親戚の叔母さんやその友人が、本島の本部(もとぶ)に物件を見つけてくれたとのこと。
話を聞きながら現地の写真を見せてもらうと、小高い丘の上にある敷地は200坪程あり建物は平屋で6LDK。ちょうど夕暮れ時で庭からの景色はとても綺麗で素敵な写真のようでした。
借家と聞いたので、下世話な私はやはり家賃が気になります。
遠慮もせずに尋ねると「30万くらいでいいらしいで」と言われビックリ!高い!
が、よく聞くと、月額ではなくて「年間で」30万くらいとの事で、再度ビックリ!安い!
どうやら持主さんが、これまでは車で本部の自宅から那覇市内まで通勤していたものの、年齢とともに運転疲れがひどくなったため、那覇市内に引っ越し、空家になっていた物件だったとのことです。 先祖代々受け継いできた土地なので、ぞんざいにもできず、叔母が管理を任されていたということでした。
そんな中で降って湧いた先輩の移住話。持主さんも「住んでくださる方がいるならご先祖様も喜ばれる」と大喜び。もしかしたら先輩の移住計画は先輩のご先祖様と先方のご先祖様が仲良くなられて決まったのかもしれません。
しかし家賃年間30万円は羨ましいです。(ブースカ)