第1127号 観光政策このままでいい?
ゴールデンウイークを迎え、奈良県内も観光客で溢れています。
コロナ禍の規制も解除され、自由に観光が楽しめるようになったのは喜ばしいことですが、これまで通りの観光政策では立ち行かなくなっていることも認識しなければなりません。
◆成長産業としての観光業
高度な情報産業や製造業には多額の投資と長い年月の研究開発が必要となるのに対して、観光業は、その土地にすでにある自然や文化を有効活用できるという点で、速効性のある成長産業であり、将来的に日本の基幹産業として期待できる産業でもあります。特にインバウンド(外国人観光客)の増加は著しく、昨年のインバウンド消費額は5兆円を突破し、過去最高を記録しています。
もちろん奈良県も世界に冠たる文化遺産や豊かな自然にあふれており、観光地としてのポテンシャルは日本でトップクラスです。今までは、ベッドタウンとして発展してきた経緯がありますが、これからは地域の資産を生かした地場産業の育成という意味で、観光関連産業の育成を重視すべきです。
しかし、今の観光業は、「おもてなし」という美徳を強調しがちで、ビジネスの視点から見て不十分と思えるところもあります。政府の政策としても、インバウンドにしっかりと高額のお金を落としてもらい、「稼げる」産業を目指す方針を前面に打ち出すべきだと感じます。
また、観光業全体の問題として、高度人材が不足しています。
例えばあらゆるインバウンドに対応した各国の言葉を使えるガイドを地方の大学で育成したり、先端的なマーケティングの知識をもった人材の呼び込みを図るなど、観光業を、高度な付加価値を持ったサービス業として育てていかなければならないと感じます。
◆安く買いたたかれる日本
国内観光客との関係でも問題が発生しています。
インバウンド激増は円安に大きな原因があり、海外から見れば日本旅行は、格安で最上のサービスを受けられるという点で大きな魅力となっていますが、結果、需要の増加でホテル料金などは値上げの一途をたどっています。
一方、日本人は実質賃金が上がらず、値上げが続く国内旅行に出かけることすら難しくなりつつあります。
産業育成はまず、国内需要を基本とすべきであり、日本人が適切な費用で旅行できる市場としなければなりません。海外ばかりに頼ることは、仮に再びコロナのような状況が生じたり、世界情勢が不安定化した場合にリスクが大きいのです。
◆分散の思考を観光にも
もう一つの視点として、観光業はあくまで地域住民との共存共栄が重要で、観光客ファーストになってしまってはいけないということが上げられます。
近年、京都ではオーバーツーリズムと言われる観光客の集中によって交通渋滞がまん延し、マナーの悪い観光客の騒音やゴミ捨てなどが問題となっています。
奈良でも東向商店街などは、休日の昼など歩くことすらままならない状態です。観光においても、一極集中は大きな弊害を生みます。
ここは政治における地方分権と同じく分散の発想を強調すべきで、例えば京都を訪れる観光客の近畿一円への分散化や、奈良県においても奈良市など北部だけではなく、南部の豊かな自然を生かした観光への誘導などに積極的に取り組むべきです。
観光は人の心を癒し、活力を生み出す人生に欠かせない体験です。観光業の成長を図り、同時に人の成長、社会の成長へとつなげていくことが必要だと思います。
スタッフ日記「ぎれん」
国会事務所に勤め始めて4か月目に突入した、ななリターンズです。
世の中に「業界用語」というものがありますが、国会で出会ったある「業界用語」をご紹介します。
「ぎれん」、これはなんのことでしょうか。あまり語感がよくないのですが、「こないだのぎれんで」とか「次のぎれんは?」など、よく議員の方がたの会話に登場します。
「ぎれん」とは「議員連盟」の略称です。社会の動向にある志をもつ議員が「XXX議員連盟」→「XXXぎれん」を立ち上げ、参加する議員間で活発な討論が開始されます。
[XXX]は旬のネタであることが多く、私達に身近なことにこそ、議員のテーマがあるのかな、と感じます。そこで!現在、開催されている「ぎれん」をいくつかご紹介します。
○睡眠ぎれん
(睡眠の科学について議論、参加議員は覚醒しています)
○サウナぎれん
(サウナ振興について議論、サウナの中の開催ではありません)
○爬虫類・両生類を考えるぎれん
○ネット社会におけるプライバシーの在り方を考えるぎれん
○非正規雇用労働者待遇改善と希望の持てる生活を考えるぎれん
等々、無数です。議員らの張りめぐらせているアンテナが見えるようです。
皆様も心に想う「XXX」がございましたら、駅頭、シビックミーティングなどでぜひ直接お知らせ下さい。(ななリターンズ)