第1072号 ねつ造を巡るプロレス
総務省文書問題で国会は大荒れです。報道の政治的公平性を巡って、高市早苗大臣が辞職をも口にするなど、総務省との間で茶番に近い泥仕合の様相を呈しています。
◆自治省+郵政省+総務庁=総務省
今回の問題はあたかも高市大臣と総務省全体の対立のようですが、実は総務省と一口に言っても、内部は3つに分かれた縦割り構造となっています。
総務省は、地方自治を担う旧自治省、情報通信担当の旧郵政省、行政管理や評価を司る旧総務庁の3つの省庁がまとめられて発足しました。しかし職務は分離しており、大臣秘書官も旧省庁それぞれから出されます。
私が国土交通大臣を務めていた際も、旧運輸省と旧建設省からそれぞれ秘書官が付き、所管は明確に分離していました。
今回、放送法を扱う旧郵政省の役所内での文書作成が問題となっており、旧自治省系の部署は蚊帳の外です。
そのため、旧自治省出身の平木省奈良県知事候補などが文書の作成に関与しようがないのは役所の仕組みからいえば「自明の理」であり、知事選や自治体議員選挙を直前にして、不正確な憶測を持ち出すのは適切ではありません。
◆政治的公平性が最大の問題
その上で今回の問題を整理すると、2点に集約されます。
一つは、放送内容の政治的公平性の判断についてです。文書には、安倍政権の礒崎陽輔首相補佐官が、特定の一つの番組を対象に政治的公平性があるかどうかを判断すべきとする主張を総務省に対して行った旨の記載があります。これでは、政治的に際どい主張を特定の番組で行うことをちゅうちょせざるを得ない場合が出てきます。実質上の言論弾圧にもつながりかねません。
日本の報道の自由度は先進国の中では低いとされており、特に第二次安倍政権以降、メディアが政権に忖度しているのではないかということはたびたび指摘されてきました。その背景にこのようなやり取りがあったのだとすれば深刻な問題です。
◆ねつ造したのかどうか
もう一つは、早い段階で文書をねつ造と主張してしまったことから問題となった文書の正確性です。
安倍政権下で変質してしまったのかも知れませんが、私の大臣時代の経験から、行政文書とおぼしき形式の文書を数十ページもねつ造することは考えられず、大臣の口からそう簡単にねつ造という言葉が出てくること自体が不自然です。
また、総務省による自身へのレクそのものがなかったという主張は、当時の同席した職員に問えば簡単にわかることであり、少なくとも正式な行政文書に、架空のレク内容を記載するという行為は考えにくいことです。
にもかかわらず最初からねつ造と決めつけ、売り言葉に買い言葉で辞任や議員辞職にまで言及したことが火に油を注ぎました。
言った言わない、ねつ造だ、そうではないというような単純な二項対立のプロレス的な面白さで耳目を集めている今回の騒動ですが、場外乱闘的な煽りを繰り返していても貴重な時間の無駄遣いそのものです。
森友・加計問題以来の課題である行政文書の在り方を議論して、こんなことばかりではなく、防衛増税や少子化対策の是非、子ども予算の倍増など、国民の暮らしにかかわる議論をするべきなのです。
スタッフ日記「WBC」
WBC、ワールドベースボールクラシックが始まりました。二刀流の大谷翔平選手やダルビッシュ有選手等大リーガーの参戦もあり、テレビの視聴率も50パーセント前後と大変な盛り上がりを見せています。
大谷選手が出てくると家では娘も家内もキャーキャー、普段私が阪神の勝敗に一喜一憂していようと目もくれないくせに、ここぞとばかり「にわかファン」となり、大盛り上がり。
とはいえ、日本は4連勝し、危なげなく1次リーグを突破。佐々木朗希、山本由伸らの投手陣らの活躍、1番を打つヌートバー選手の攻守にわたる活躍などあげればきりがないほど名場面が浮かんできます。
そんな中、我が阪神タイガースの中野拓夢選手が下位打線ではありますがチームを牽引する姿は非常に頼もしく思っています。
16日のイタリア戦も多少ヒヤッとしましたが勝利をおさめ、いよいよアメリカのマイアミです。残るは準決勝と決勝、負ければそこで終わりの一発勝負です。歴代最強と言われる今回の「侍ジャパン」、2009年松坂大輔を擁したチーム以来の3大会ぶりの優勝への期待が膨らみます。
22日の決勝戦には必ず進出すると私は固く信じているので、当日は朝から全力応援の予定です。
が、翌日からは奈良県知事選挙、そして月末からは統一地方選の県議会議員選が始まります。
カレンダーを見ると現実に一気に引き戻されてしまい、ゆっくり野球観戦もままならず、残念!(スギ)